あ ページ1
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「はい、これ」
と渡された参考書の数々に、訝しんだように母の顔を覗き込むと、そこにはいびつに歪んだ善意の顔。
「晋助はお勉強が好きでしょう?誕生日プレゼントよ」
「はぁ……」
別段欲しい物もなく、特に何も言わなかったが……
まさか参考書を渡されるとは。
完全な予想外というかなんと言うか。
(この人は本当に人の親だろうか……?)
普通に考えて、誕生日に参考書など、嫌がらせ以外の何物でもないのに。
なぜこの女は善意でそれができてしまうのか。
それが全くもって不思議でならなかった。
「このままもっとお勉強して、立派にこの家を継ぐのよ?あなたはこの家の嫡男なんだから」
くだらねぇな。
家だなんだ、そんなもの。
どんな平民でも優秀なやつは優秀だし、いくら名家でも馬鹿は馬鹿だ。
家に意味なんかねぇ。
そんなもの後生大事に守って繋いで死んでいくなんて、そこらの農民の方がよっぽど価値のある生き方じゃねぇか。
「はぁ、ありがとうございます」
気のない返事と、適当なお礼だけで女は満足そうに頷くと、思い出したように俺の頭を撫でる。
……この手に温もりを感じられなくなったのはいつからだろう。
この眼差しに応えようと思えなくなったのは一体いつからなのだろう。
ぼんやりと窓を見ながら蝉の声を聞いている。
手元の参考書に目を落とした。
どうせ数回見たら覚えられてしまう文字の羅列に、
誕生日なんてくだらねぇな、と、しずかにため息をついた。
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沖田レイア(プロフ) - まめさん» まめ様!ありがとうございます!今日はみんなで晋助様のお誕生日をお祝いしましょう! (2020年8月10日 17時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 凄く高杉さんへの愛を感じました。。 泣きました。とても良い作品をありがとうございます! (2020年8月10日 11時) (レス) id: 857664c7be (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - Sakura様……!なんと早いコメント……!ありがとうございます!すごく嬉しいです! (2020年8月10日 0時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
Sakura(プロフ) - めちゃめちゃ感動しました…!!!!!素晴らしい作品をありがとうございますッッ (2020年8月10日 0時) (レス) id: 321ab1938b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年8月10日 0時