三十匹 ページ30
.
「ええと、何か手伝う事はありませんか?」
「え?」
「その、暇で……」
ああ確かに、と頭を抑える。
十幾つの娘さんには何もせずじっとしているというのは苦痛だろう。
しかし書類仕事は機密が大量だからさせられないし……
はてさて、どうするか。
「……申し訳ありませんが機密の為書類仕事をおまかせする訳にはまいりません。厨に行ってみてはいかがでしょう?材料さえあればお菓子など作ってみては如何かと」
「お邪魔じゃありませんか……?」
「この時間だと空いていると思うので邪魔にはならないと思いますよ」
おのぶさんは顔をパァっと輝かせる。
そんなに暇だったのか。これは可哀想な事をした。
「私厨に行ってきます!ありがとうございました!」
「いえいえ〜」
パタパタと駆けてゆく少女の後ろ姿は幼さ残る無邪気な物で。
そんな娘さんがテロ組織の、総大将の愛人って……
(世の中、ままならないもんだなぁ……)
気立ても良くて、べっぴんさん。
……きっといい所の旦那さんと結婚して平和に暮らすはずだった子がこんな所で終わるなんて。
「本当に可哀想……でも」
同情以上の事はしてあげられないけれど。
恨むなら、親か運命でも恨んで欲しいわ。
177人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
coma7672(プロフ) - すいません!前のコメント間違えて送信してしまいました、、お話最高すぎます!更新楽しみにしています!! (2020年4月7日 23時) (レス) id: 46f7afe943 (このIDを非表示/違反報告)
coma7672(プロフ) - 高杉晋助 (2020年4月7日 23時) (レス) id: 46f7afe943 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年1月12日 19時