十二匹 ページ12
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また子ちゃんの、まるでグッドラックとでも言うような視線に泣く泣く別れを告げ、晋助様に向き直る。
突き出されたのは並々に入った徳利。そして空になったお猪口。
注げってか。
まあ、こういうことは昔取った杵柄でそこそこにはできるけど。
「流石は元三河屋の芸妓だなァ。酌一つでも色気が違ぇ」
「あら、ありがとうございます。よく女将には愛想と色気が足りないと怒られておりましたので」
「あァ、確かに愛想は今でも足りねぇなァ」
「必要ですか?」
「いいや?お前はお前の仕事をしてくれればそれで構わねぇよ」
晋助様は喉だけでクツクツと笑うといっきに煽ってお猪口を空にした。
流石は酒豪。お猪口に注ぐ意味ないんじゃないか?
徳利から直に飲んだ方が絶対早くていいと思う。
「しん様ァ、うののお酒も呑んで?」
「あァ、注いでくれ」
おうのさんは晋助様にピッタリとくっついたまま器用に注ぐ。
こぼさない所がプロだ。
確かおうのさんは元々吉原の遊女、しかも天神だったそうだから、きっとこういうことは私より上手いんだろうな。
「そう言えば、Aさん」
「え?はい。なんでしょうか?おうのさん」
まさか声をかけられるとは思ってなかった。
チラリと晋助様を見ると面白そうにニヤニヤと笑っている。
ほんとうにこの人悪趣味だ。
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coma7672(プロフ) - すいません!前のコメント間違えて送信してしまいました、、お話最高すぎます!更新楽しみにしています!! (2020年4月7日 23時) (レス) id: 46f7afe943 (このIDを非表示/違反報告)
coma7672(プロフ) - 高杉晋助 (2020年4月7日 23時) (レス) id: 46f7afe943 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年1月12日 19時