宵八つ ページ8
「ごめんね〜。一度でいいからやりたかったことなのよ」
えへへ〜、なんて笑ってるが正気の沙汰ではない。
「しのぶもカナヲも疲れちゃったのかしら?こんなぐっすり眠っちゃって」
誰のせいだと思ってんだ。正確には寝たんじゃなくてぶっ倒れたんだよ。
「カナヲ、可愛いでしょ〜。頬もぷにぷにしてて気持ちいいのよ?Aちゃんもどう?やる?」
流石に寝かせてあげようと、首を横に振るとカナエはふふっと口を抑えて笑った。
「ねえAちゃん」
カナエは二人の妹を優しい瞳で見つめながら、視線はこちらに寄越さず、改まった様子で話しかけてきた。
「私は、ちゃんと役目を果たせているかしら」
「!」
その時のカナエの背中は、小さく、背丈には合わない重荷を背負っているように見えた。
全てが弱々しかった。
優しい瞳の中に、拭いきれない寂しさがあった。
「時々ね、不安になるの」
ぽつりぽつりと本音を零すカナエ。
「鬼殺隊にこの子たちを関わらせていいのかな……って。出来れば二人には、鬼と関わらず、普通の女の子としての幸せを掴んで欲しいの」
こくりと、相槌を打つ。
「けどしのぶは、そんな幸せ要らないっていつも言うのよ?私は、両親の分まで妹を幸せに導いてあげなきゃいけない、のに……」
私たち二人は、お互いの過去を少なからず知っている。
少なからずというのは、互いに深いところまで詮索しないよう、一線を超えてしまわぬよう、自分たちを守るための暗黙の了解。
出会ってから、ずっとそうしてきた。
でも彼女は今、禓黒Aという人間が何も話さないと分かっていながら、歩み寄るように本音をこぼした。
まるで、私との間に出来た壁を壊すように。
「この話、前にも少ししたけど、私は辛いとしか言わなかったわ。でも今なら、全て話せる気がして……」
淡い笑みを浮かべて、カナエは私に手を伸ばす。
「Aちゃん。私は、あなたの本当の親友でありたい。辛いことも、楽しいことも、全部吐き出せる仲になりたいの」
頬を包むカナエの手は、思った以上に心地よくて。
「だから──」
けれど、カナエはその先の言葉を紡げなかった。
「ッ」
Aがさせなかったのだ。
カナエの口に人差し指を当てて、それ以上は許さないと、聞きたくないと拒否していた。
まるで、私は辛くないと言うように、笑っていた。
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息抜き(プロフ) - カカさん» コメントやお星様までありがとうございます、頑張りますね(*_ _) (2020年1月14日 1時) (レス) id: 1ca44e1fd0 (このIDを非表示/違反報告)
カカ(プロフ) - 主人公の周りのキャラの優しさが滲み出ててすごいよきです、、、。見る度にお星様を押してしまいます。更新の方無理をなさらずに頑張ってください! (2020年1月14日 0時) (レス) id: c193d50bb9 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - ばぐさん» コメントありがとうございます。私もコメントが来る度に飛んで喜んでます。頑張りますね<(_ _)> (2020年1月8日 18時) (レス) id: 1ca44e1fd0 (このIDを非表示/違反報告)
ばぐ(プロフ) - とても面白くて通知が来る度 飛んで喜んでいます!これからも頑張ってください! (2020年1月8日 18時) (レス) id: c64457db9e (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 無気力人間Aさん» コメントありがとうございます。更新頑張ります<(_ _)> (2020年1月7日 19時) (レス) id: 1ca44e1fd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:息抜き | 作成日時:2019年12月2日 1時