【鬼滅の刃】幸せ者の胃は崩壊寸前

宵三十一 ページ31

「Aちゃんッ！ゴホッゴホッ……」

『止血、応援が来る』と手話で伝える。



「やぁやぁ、今夜は月が綺麗だねぇ？」



虹色の瞳には刻まれた文字。十二鬼月、しかも上弦の弐ときた。

よく今まで一人で堪えたものだ。



「君はカナエちゃんの親友？」

……何故、そんな事教えなければならない。

「あ、教えたくない？君、顔隠してるけど思ってる事は隠せないみたいだね」

よく喋る鬼だなぁ。知能を持つ鬼ほど厄介なものはないって、誰かが言ってた気がする。



「大丈夫、安心してくれ。二人とも、一緒に救ってあげ」

「っ」

「うわぁっ！！もう、話の途中で攻撃しないでおくれよ＿＿Aちゃん」


いちいち癪に障る言い方してくれる。伍ノ型で腕を切り落としたはずなのに、もう再生しているとは。


互いを見る目が変わり、Aは刀を、童磨は扇を構える。



「さぁ、遊ぼうぜ」



童磨の言葉を合図に、戦闘が始まった。




＿＿壱ノ型 闇討ち

＿＿血気術 粉凍り




カナエが手話で言ってた通りだ。血気術に纏った氷を吸えば、間違いなく肺が壊死する。

呼吸を駆使する鬼殺隊にとって、厄介以外の何物でもない。



「ねえねえ、さっきから二つしか技使ってないけど、俺もしかして、なめられてる？」

「……」

「んいや、違うなぁ。……ふっ、ふふふ。面白い、面白いよ君！！俺と同じで、相手に技を出し切らせようとしてる」


Aは守るために、童磨は勝つために。


「鬼殺隊の子はちょっと揺さぶっただけで崩れていくからさ……君みたいな子は初めてだよ！」


微笑んだかと思えば、一気に距離を詰められる。それを難なく受け流すA。



「だからAちゃん。本気で行くぜ？」



夜明けまで、あと一刻────……

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