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貰ったイヤリングと足を揺らしながら、どこかで拾ってきたであろう猫じゃらしで一人遊んでいる一松先生に声をかける。
「ねーねー一松せんせー」
「……その『一松せんせー』ってのいいね」
勢いよく顔をあげた一松先生は、相変わらず感情の読めない暗い顔でそんなことを言ってきた。

「え、なんで?」
素直に疑問を抱く。「いい」ってどういうことですか。
「『せんせー』って延びてる感じと、あと名前で呼んでるの」
「だって苗字だったら他の先生と被っちゃうじゃん。ほら、国語の赤くてうるさい……」
空で顔を思い浮かべる。揚々と下ネタを吐く小学生男子のような先生。名前が、全く思い出せない。
「おそ松先生」
あぁ、その人だ! とぽんと両手を叩く。
その他にもたくさん松野先生がいたはずなのに、名前が本当に思い出せない。

「そうそう。あと、英語の真っ昼間にもサングラス掛けてる……」
「カラ松先生」
「うんうん。えーっと、数学の意識高そうな眼鏡掛けてる……」
「チョロ松先生」
「その人だ。あとはー……、日本史の女子力高い……」
「トド松先生」
「そう! その人!」
せんせーすごい! と思わず手を叩いて称える。なぜそこまで人の名前を覚えられるんだろう、羨ましい。
すると一松先生は怪訝な顔をしてこちらを見る。
「覚えられるでしょ」
「覚えらんないよ」

名前を覚えられるのは才能だと思う、わたしからすれば。
……話が逸れたな。
「あと十四松先生とも一緒でしょー。松野さんって多いの?」
「さあ……、Aさんしか興味ない」
「……。一松せんせーもわたしのこと下の名前で呼ぶよね」
当たり前のように言ってくる恥ずかしすぎる言葉を無視して、思ったことを投げ掛けた。
「うん。なんか、何回も呼びたくなる」
一松先生は明後日の方を向いて、ぼんやりと猫じゃらしを揺らしている。

「そうー?」
自分じゃよくわからない。
「Aさん」
「なに?」
返事をしたが一向に言葉が返ってこない。
「Aさん」
「えっ、なに」
もう一度名前を呼ばれる。
「Aさん」
「だからなに?」
イライラして来た頃合いに、一松先生はわたしと目線を合わせた。

「呼んでみたかっただけ」
──彼氏か! 構ってほしい寂しがりな彼氏か!
「素敵な名前だし」
「……はぁ」
「つけた人に感謝したいって言うか、もはやご両親に『産んでくれてありがとうございます』って菓子折り持って挨拶に行きたいって言うか」
「そこまで行くと怖いよ! やめて、普通に迷惑!」
彼氏、と言うのは撤回しよう。こいつはただのストーカーである。

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海柄  - この作品…神すぎます……凄いです!いつ見ても癒されるぅ〜!投稿お疲れ様ですっ!!次の投稿待ってます!ファイトっᕦ(ò_óˇ)ᕤ (2022年4月9日 8時) (レス) @page17 id: c80b266ed1 (このIDを非表示/違反報告)
MATSUNO NANA(プロフ) - もう、続きは書かれないのですか?いや、すみません。気長に待ってます。楽しみにしています! (2021年5月4日 17時) (レス) id: 288501894e (このIDを非表示/違反報告)
小森桃子(プロフ) - ZUNさんは神なのだwさん» 神だなんて……。ありがとうございます! これからも喜んでいただけるよう頑張ります (2019年6月21日 17時) (レス) id: a15aeb4942 (このIDを非表示/違反報告)
ZUNさんは神なのだw - 一松可愛いすぎでしょ!作った人…神じゃん! (2019年6月21日 17時) (レス) id: edb9ce2cd8 (このIDを非表示/違反報告)
小森桃子(プロフ) - 憂月さん» ありがとうございます!私自身も萌えてます(笑) (2019年4月26日 19時) (レス) id: a15aeb4942 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小森桃子 | 作成日時:2019年3月26日 10時

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