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55時間目 ページ10

よく、猫が木の上に登ったまま降りられなくなっている、というシチュエーションがあるだろう。特にフィクションで、イケメンが颯爽と現れて猫を抱き上げ、降ろした後猫を心配していた女の子にチヤホヤされる、なんてベタな展開がある。じゃあ、何で猫はそもそも降りられない木の上に登るのだろうか。


……なんて哲学じみた事を巡らせながら私は遠くの景色をただぼんやりと見ていた。


kn「Aー!!大丈夫かー!?!?」


『…………全然大丈夫じゃない助けて誰か』


tn「Aジャングルジムの上でどうしたん?」


zm「何か高鬼やってて捕まらんように上に登ったら降りられんくなったらしい」


rb「A高所苦手やから早く何とかせんと……」


出来るだけ下を見ないようにしてグッと涙を堪える。足も震えていて、正直いつ落ちるか分からない。ジャングルジムのてっぺん付近で、何とか手で棒を握りながら耐えている。けれど精神は限界に達する間近。


ut「Aちゃん…!猿山呼んできたで!」


rd「大丈夫か〜〜」


この状況にはあまりにも不相応な、気の抜けるような声。それと同時に虫酸が走る声。何でよりにもよって……と思うけど、よくよく考えたら担任でかつ体育教師だから適任なのか。欲を言えば女性の先生が良かったけど。

下の方で、みんなが先生に状況を説明している声が聴こえる。


rd「A、降りといで」


高い場所に登ってしまった猫に語りかけるような優しい声で、両手を大きく広げた。一瞬で先生の考えを理解は出来たものの激しく首を横に振る。


『は…!?無理無理…!!そんなの出来るわけない…!!猿だから余計やだ…!!!』


tn「Aに死ぬほど嫌われとるやん」


rd「降りてこないと一生このままだぞ〜」


一生このまま。
その言葉にまた身体がピクリと震える。ただでさえ足も精神でさえも限界に達しようとしているのに。だけど、先生の中に飛び込む……つまり、ハグに近いような事をしろ、と。正直に言おう。地獄である。じわり、と視界が滲んできた。高所に立たされている恐怖か、はたまた精神の限界に達しようとしているからか。

もういいや、どうにでもなれ!

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葵斗 - いいぞもっとやれ (2月26日 21時) (レス) id: 6f83c28ab3 (このIDを非表示/違反報告)
いちご - 続編嬉しいです!無理しない程度にこれからも頑張ってください! (9月9日 12時) (レス) id: 1c05c5cc8b (このIDを非表示/違反報告)
- 愛してます”””” (9月8日 21時) (レス) @page3 id: b95bc397ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神崎いのり | 作成日時:2023年9月7日 23時

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