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・責める声に、飴を添えて。 ページ34

「Aとチーノ、来んの早いなぁ。」


少し間延びした声に、Aは俯いていた顔を上げる。
コネシマは、地下牢の鍵を差し込んで、ガチャリと開けた。
そして、走るようにして下っていった。

『あ、ちょっと待ってください、コネシマさ、』
「俺らも行くで。心の準備はできてんねやろ?」

チーノに瞳を覗かれて、Aは反射的にうなずいた。
覚悟をしたとは、言ったものの、Aの指先は震えていた。
必死に握って、温める。

階段を下る音は、無機質な金属音で、Aの心を冷やしていく。
その心に、とどめを刺すように、Aの足場がふらついた。
よろめいたものの、手すりに捕まって、なんとか耐える。

「気ぃつけてくださいね。ちょっとやりすぎちゃった人が、いますから。」
Aが足元を見ると、ねっとりとした血がついた、見慣れた軍服があった。

β国の軍服だ。
やりすぎた、の意味を理解したAの鼓動は、早まっていく。

「三人しか残ってへんやん。」
下の方で聞こえるコネシマの声に、チーノの足は早まる。
慌てて、追いかけようと走ったAは足を滑らせ、そのまま滑り台のように、滑っていく。

下に人間がいるからなのか、怪我一つせず、Aは下りきった。

べとべととした、手を軍服で吹きながら、Aは牢の中を見る。
その中には、よく見知った男がいた。


「久しぶりだな、裏切り者。」

男の瞳は、Aを捉えて離さない。
鋭い視線に、Aは体を刺されているかのような感覚に陥った。

『......。』
胃の中の酸っぱいものを、どうにか戻して、Aは男を見つめる。
男はAと、同期で卒業し、同期の中で最も出世している人間だった。

「俺ぁ逃げ遅れたんだよ。お前みてーな、命が惜しい馬鹿な王子の、命のためにな。」

その声はひどく冷たい。
Aの息が詰まる。

「こっから出れたら、お前のこと一発叩いてやりてぇ。その尻軽さに。」
『......ごめん。』

Aの一言に、男の目つきがさらに悪くなる。
コネシマもチーノも、Aの知らない二人の若い男兵も、押し黙っている。

「その性格は、お前のおっかさん譲りだな。」
その言葉に、Aの心臓が一気に冷えた。
目の辺りが少し、険しくなる。

『その話は、やめろ。』

Aの言葉も聞かず、男はまた口を開いた。



「ほら、その荒っぽいところは父譲りじゃねえか。」

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2(プロフ) - 蠱毒さん» 大丈夫です!わざわざありがとうございます( . .)" (4月1日 23時) (レス) id: 6ca65a7c69 (このIDを非表示/違反報告)
蠱毒(プロフ) - 2さん» ありがとうございます。そう言って、いただけて嬉しいです!こみゅーのメッセージの方にパスワードを送っても宜しいでしょうか? (4月1日 9時) (レス) id: 8cf3c0ec6d (このIDを非表示/違反報告)
2(プロフ) - 面白くて続きが凄く気になるのですがパスワードが掛かってて続きを見れません💦良かったら教えてくれませんか? (4月1日 2時) (レス) id: 6ca65a7c69 (このIDを非表示/違反報告)
くろねこ(プロフ) - とても面白かったです!続きが読みたいのですがパスワードが…教えて貰えないでしょうか、、 (1月11日 1時) (レス) @page50 id: f664205a1a (このIDを非表示/違反報告)
こがしアイス(プロフ) - インクさん» さあ、どうなるのでしょう。続編も是非、お楽しみください。 (2022年8月12日 23時) (レス) id: 8cf3c0ec6d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蠱毒 | 作者ホームページ:@kodomikodoku  
作成日時:2022年8月7日 18時

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