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「……記憶が無い？」
『ああ、11歳に遭った事故以降の記憶が無いんだ。だから、僕が今までどこにいたのか説明出来ない。すまない、心配させたっていうのに……』
「それってお前が1番大変だろ！いいんだよ、謝るなって！！」
にっかり、と漫画では書かれていそうな満面の笑み。その笑顔は11歳までの記憶しか持たない自分からしても、変わっていないと思わせてくれるものだった。
『そう言えば、君のサッカー馬鹿は未だ健在のようだね。』
「え？俺ってサッカー馬鹿？」
『うん、サッカー馬鹿だと記憶しているよ。』
子供たちのサッカーに付き合ってやる程、サッカーが好きなのだろう。残っている記憶を引っ張り出してきて、まだタイヤで練習しているのかななんて考える。
『まだ鉄塔に残ってるのかい、タイヤ。』
「勿論だ、今から行くか？！」
『もう日が暮れるが……そうだな、見に行こうか。』
よっしゃ！と嬉しそうに立ち上がる円堂を横目に、ゆっくりと立ち上がる。彼は走り出すが、こちらがぎこちなく歩いているのを見ると走って戻って来た。
『忙しないな君、わざわざ走って戻ってくることないのに。』
「一緒に行きたいからさ！……お前が1か月前にも事故に遭ってるの忘れてて急いじゃって、ごめん！」
『はは、謝るなよ。』
円堂の歩幅は小さくなり、こちらに合わせてくれる。その心遣いが擽ったくて、思わず出かけた笑いを噛み殺した。
『父さんに円堂との接触を報告するなよ、帰っても1人で散歩していのだと報告しろ。』
「ん、なんか言ったか？」
『言ったけど、教えない。』
「えぇ……？」
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作者名：鷹羽 | 作成日時：2021年2月18日 2時
