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隣の席のクラスメイトに声をかけられ、彼は労わるように背中をさすった。
『……え、怖いな。誰だい君、姓名を共に全て音読みで読んでみろ。さぁ、音読みで!』
「うわぁ、相変わらずお前のダル絡み面倒くさい……と言うか、本当に何処行ってたんだよお前。」
頬杖をつきながら、視線を前に移した幼馴染の1人───東京を横目で見やる。背中に置いていた手は頭に移動していて、ぐしゃぐゃと撫で回す。
『……覚えてないんだ、上手く説明できない。ごめん、東。』
「え、ちょッ……そんな泣きそうな顔するなって〜!深く聞くつもりないから、忘れろって!!」
『よし、忘れた。』
「俺で遊んだな?!」
こめかみを指の第2関節で、捻るように押される。
『……く、あははッ!』
「……え、変なツボ押した?ここで笑うの、不気味すぎてシンプルに怖……」
『嬉しいんだよ……僕、ここ3年間の記憶が無いんだ。でも円堂も東も僕を覚えてる、僕も円堂や東だけじゃなくて風丸も記憶に残ってる……友達は何も失ってないんだ。』
もしも、全ての記憶が失っていたら……ここで何の感情も抱けなかったかもしれない。円堂に会っても東に会っても、嬉しいという感情は湧いてこなかったかもしれない。
「大神、お前……」
『東、後で一緒に風丸のところに行こう。』
「……ああ。」
『僕が居なかった時間、皆でどんなことしてたのか教えてくださいな!』
「……お安い御用だっての!」
「(友達は何も失っていないって……そう言えばお前、事故でおばさんを───……)」
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作者名:鷹羽 | 作成日時:2021年2月18日 2時