【イナイレ】おお、神さまは天の上:序 (ページ14)

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『どうかな、佐々木さん。』

「似合っております、若様。」

季節は春、桜が舞う季節に、身にまとった真新しい制服。その場でくるりと1回転すれば、紺色の制服に付いて目立っていた桜の花びらが落ちる。

『……記憶では、つい最近まで小学生だったんだがなぁ。』

入学式なんて行わず、いきなり中学2年生として学校生活を行うのだ。同級生とスタートラインが違い、若干のハードルの高さに肩を竦める。

『……やっていけるんだろうか。』

「若様ならきっと。」

『……はは、うん。そうだね、気負うだけ無駄だろうな。』

鞄を使用人の手から攫い、肩にかけて靴紐を結び直す。使用人は焦ったように鞄を持とうと手を伸ばすが、それを制した。

『中学生として初めての登校を、君は僕から取り上げるのかい？』

「いえ、そんなつもりは……」

使用人は車のキーを左手に持ったまま、鞄を持つ為に伸ばしていた手をわたわたとさせている。その右手に自身の手を重ねると、きゅっとお互い握手をした。

『心配なら、勝手に尾行すればいいさ。』

「こんな晴れ舞台にそんな無礼なことは致しません、どうかお気をつけ下さい。」

『無礼なことに自覚あるんだね……待て。その口ぶりだと、晴れ舞台じゃなければ今後も尾行する予定なのかい？』

使用人に無言で手を離され、背中を押されて家の門前まで運ばれる。振り向けば上品に笑顔を作って、近距離で手を振った。

……笑みが何も聞くなと訴えかけている。

『……それじゃあ、行ってきます。』

「行ってらっしゃいませ、若様。」

プライベート侵害なので、もっと注意しておくべきだろうか……。