10 ページ11
『うーん、いい天気だ!
ディンブラ辺り用意して、レモンかミルク付けてくださいな!』
「かしこまりました。」
脚も問題なく機能するようになり、無事に医者も外れた。指示された通りのことをこなしているため、父も現在の自分には無関心だ。
午前のうちにやることを終わらせて、気分転換に外でお茶にすることにした。
「用意が整いました、スコーンもご用意しております。」
『気が利くね、ありがとう。』
季節は冬の終わり、だいぶ暖かくなってきた。4月からは近くの中学校に通わせてくれるようで、その中学校の理事長が午前中に挨拶に来ていたのをふと思い出す。
『……今日訪問した人、僕と同い年の娘さんが居るんだっけ。』
「雷門夏未様ですね。」
『夏未様ね、覚えておこう。』
学校の名は雷門中学校、校訓は……確か『努力と根性』だっただろうか。
『友達ができるかな、編入して溶け込めるかな…楽しみだなぁ。』
「……若様が楽しそうで、何よりです。」
いつもは表情を崩さない使用人が、くすりと微笑んだ。
『……佐々木さんの笑ってる顔久々に見たかも。』
「……御無礼をお許しください。」
『無礼だなんて思わないさ、大いに笑うといい。感情を殺せなんて命じた覚えはない、せめて僕の前だけでもちゃんと人間として振舞え。』
使用人は目を見開いて、咳払いをした。それに思わず吹き出して、顔を手で仰ぐ。
「全く、若様!
……そう言えば、ここ最近お出かけにならないようですがよろしいのですか?」
『なにが?』
「……円堂様のことです。」
使用人は小さく、幼馴染の名を発した。
「最近は散歩にも行かれないようですが……」
『時間と余裕がなかったからね、もう少し落ち着いたら行ってみるよ。』
同じ空の下、円堂は今頃何しているのかな。
39人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鷹羽 | 作成日時:2021年2月18日 2時