夜を待つ ページ38
「フォスフォフィライトでーす。102年ぶりの僕ですがニューフェイスとして頑張りますのでよろしくぅ。」
皆、フォスを見て目を丸くし驚いている。
もちろん俺も驚いているが目を丸くするほどではなかった。
というか嬉しい気持ちの方が勝っていたのだろつ。
「起きたなぁ。」
「もうダメかと思ってたよ〜。」
口々に皆が言う。
と、いきなりフォスはこちらの顔を見て微笑みながら近付いてきた。
「アマゾナーイト! 腕どうしたの?」
「…久しぶりだなフォス。腕は、無くした。」
言っている通り持っていかれたではなく、無くしたのだ。
たしかに右腕は月人に射抜かれたが、その後海に落ちて無くなった。
ということは無くなったの方が正しいだろう。
「無くした…無くしたと…。そういえば青緑って呼び方はやめた感じー? 青くなったからー?」
青緑。妙に頭に残る呼び方だが、そのあだ名でフォスを呼んだ記憶はない。
きっと腕を無くした時にその記憶も無くしてしまったのだろう。
「覚えてない。」
「まぁ、記憶少し無くしてるよねそりゃ。とりえあえずまた後で話そ!」
言われては、じゃあなと返した後自室へと歩き始める。
顔が変わって随分雰囲気は変わったが、性格は特に変わりがなかった。
というかあいつそのままで逆に嫌気がさしてくる。
「…青緑に、クリソコラ…か。」
今のところ忘れているのはこの2つ。
2つで済んでよかったと考えても、かなり大切な事を忘れている気しかしない。
「本当に運が悪いよな。」
大きなため息を吐き、自室へ入ろうとした瞬間。
突然後ろから声を掛けかられた。
「先輩、もう寝るんですか?」
後ろを振り向くと俺よりも後に生まれた宝石、ゴーシェが立っている。
ずっと前にゴーシェとモルガは居たのだが二人とも月へ行き、その後新しいゴーシェとモルガが生まれてきた。
「もうってかなり暗いだろ。お前も早く寝ろよ。」
「はーい! また明日!」
「あぁ、また明日。」
手を振って去っていく相手に合わせ、自分も手を振って送る。
かなり、前の二人と変わったと改めて実感した。
なんだか不思議な気分だ。
「……早く寝ないと。」
その気分を早く忘れたいのか、無意識に口は呟く。
今日の月は、妖しげに光っているような気がした。
早く、眠りたい。
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作者名:兀 | 作成日時:2018年6月3日 20時