新しい仕事は ページ4
「ああ、そうだクリソコラ。先生が呼んでいましたよ。身体が大丈夫そうなら行ってみては？」
健康を確認しているのか、色々なところに触れてくるルチルが思い出したかのように顔を上げ俺の目を見て言ってきた。
「そうだな。どこも痛い所はないし行ってみる。」
はーい気を付けて。そうルチルは微笑みながら言えば何かの作業へと戻って行く。
自分も立ち上がって先生の所へ行こうとしたものの、入れ替わるように青緑が視界に入ってきた。
ゲ、と。無意識に声を漏らす。
「僕が先生のところまで案内してやるよ！ どうせ場所わかんないだろー？」
ニヤニヤと中々気持ち悪い笑みを浮かべながら言う様に余計なお世話だ、と言いかけたが確かに場所はよくわからない。
適当に歩いていれば見つかるだろうと思っていたが、案内をしてもらえるとなるとありがたいものだ。
「…お前に頼むのもなんだか不安だが、頼む。」
「まっかせとけー！」
視界の端にチラリと見えたルチルは、そんなフォスを見てあからさまに大きく眉を歪めていた。
*
不安で心を埋めていたが、生憎そんな不安は余計だったようで。
目の前にはまだこちらに気付いてはなく、静かに空を眺めている先生がいた。
そして横には何故かついてきた青緑も。
「先生、クリソコラ連れてきましたー！」
フォスが声をかけると、先生はこちらへと顔を向けた。
この威圧感、何回会っても慣れないような気がする。
「クリソコラ、お前の仕事が決まった。」
低く、感情が篭っていないかのようなそんな声で先生は私に告げる。
反対に、高い声で隣の青緑はえー！？と納得がいかなそうな声を上げていた。
「新入りに抜かされた…。」
こいつ、まだ職を持っていなかったのか。
全く呆れて声が出ない。いや、まぁ先生の前だから元から関係ないような言葉は発せないが。
「お前の仕事は、環境観察だ。」
環境観察？と。全く意味がわからない仕事で、思わずそう声を出してしまった。
「あぁそうだ。日のズレを見たり、植物を見たりして異変がないか探す仕事だ。」
余りにも、余りにも地味でちょっと待ってくださいと反論したくなったが。
俺の硬度は3.5。脆く戦闘には向いていない、そして何かを作るにも重みで欠けてしまう可能性が高い。
そう考えると、合っている仕事だろう。
「…頑張らせていただきます。」
声は、自らの耳に入ってくる事はなく。
他の2人の耳にのみ入った声は、天井へ、壁へ。消えていった。
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作者名：兀 | 作成日時：2018年6月3日 20時
