記憶の棚 ページ25
「……こんっっなに目覚めが悪いのは久しぶりだね。」
手も足も重い、特に身体というか腹が。
重りを乗っけられているかのような、そんな感覚だ。最悪としか言いようがない。
やっとの思いで上半身だけを起こし、隣へ視線を移せばそこにはいつの間にか現れていたボルツが立っていた。
明らかに怒っている様子だ、これはただじゃ済まないぞ。
「3半！ 何故ダイヤを守れなかった！ あの時の万全な状態のお前なら出来たはずだろ？！」
柄から抜けている状態の剣を喉元に当てられる。
無意識に身体は後ろへ退いた。
何を言うか迷い、無意識に眉は歪んだ。
「その、すまなかった。」
「っち。」
1つ舌打ちをした後、ボルツは剣を戻す。
安心で大きく息を吐いて、ボルツへの恐怖が上回ったのか怠く無くなった身体を動かしベッドから降りた。
「……………ダイヤを、頼むぞ。」
小さくボルツが呟く。
その言葉の意味が分からず、は？と声を漏らしてしまう。
ただそんな困惑も束の間、ボルツの後ろからいきなりダイヤが現れた。
「僕と、組んでくれる？」
目が丸くなる。
あんな失敗をしてしまったのに、ダイヤは笑いながら言ってくれた。
償いも兼ねて、これには了承するしかないな。
「……あぁ、もちろん。」
＿＿
「最近、変なものを見るんだ。」
学校内を俺とダイヤ、2人で歩いている時。
アマゾナイトの話をしてみようと、口を開く。
なにか特別な理由がある訳では無い、ただ、なんとなくで。
「変なもの？」
ダイヤが返す。
そうだ、と自分も返してそのまま話を続ける。
「アマゾナイトが、色々言ってくるんだよ。ちゃんと俺達と同じ姿で。」
「アマゾナイト…ってクリソコラの首元についてるそれよね。どんな見た目なの？」
頭の中で記憶が入っている棚を一つ一つ漁るが、全て朦朧にしか覚えていない。
きっと幻覚に近い類のものだろう、曖昧でも、きちんとそこには居る。なんて、おかしな話だが。
＿＿ああ、もちろん、朦朧にというだけでこの前言われた大切な事はきちんと覚えている。
ただその容姿だけがはっきりと思い出させないのだ。
まるで青い空のような宝石、というところはわかるのだが。
「色は青い空のようで…、それしか思い出せないな。」
「かなり曖昧なのねぇ。ってあれ、ボルツとジルコンじゃない。」
ダイヤが見つめる方向を同じく見ると、確かにそこには仲良さそうに戯れている2人がいた。
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作者名：兀 | 作成日時：2018年6月3日 20時
