繊月が閉じる時【宝石の国】 (ページ28)

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青は言うページ28

「クリソコラ。」

朝。ダイヤの声によって起こされる。
少しだけ痛む頭を押さえながら、上半身を起こし目を開いた。
差し込む朝日が、いつも通り寝起きだと眩しく感じる。今日は何故かそれが不愉快なものに感じ、妙な苛立ちが胸を蝕んだ。

「悲しいお知らせだけど…ゴーストが、月に行った。」

　ダイヤの言う事が理解できず、目を丸くする事しか出来ない。
は？と漏れた声は、海の底の様に重く、そして低くなっていた。

「そん、な…訳…。」

拳を強くベッドへと打ち付け、喉から絞り出すように言う。
心は憎しみと怒りで、ぐちゃぐちゃになっていた。
元の形を残さないほどに。

「それで、ね。新しい宝石が来たの。」
「新しい、宝石…？」

「あの子。あ～見事にフォス尻に敷かれてるわね～。」

　笑ってダイヤは言う。
ダイヤの視線の先には、肌が黒い見た事のない宝石と青緑が居た。
目を凝らしてよく見れば肌が黒い宝石の服は、ゴーストのもの。
使い回したとしても、あの宝石は生まれたばかりにしては大きく大人びている。

「あれ……ゴースト、か？」
「ええ、そうよ。正しくは元のゴーストの内側に居たゴースト。」

　ややこしいとだけ思う、それ以外は特に思う事は無かった。
いつの間に、こんな薄情になっていたんだったか。
きっと最近の事だったとは思うが。

＿そのすぐに、細かい事は思い出せそうにもなかったため考えるのは諦めた。
後で、あのゴーストに挨拶をしておかなければ。

＿＿

　1人で、青い空を眺める。
風の音も草が騒ぐ音も聞こえぬようにただただ青い空だけを眺めた。
しばらくし、突然青が語り掛けてくる。

『薄情で、生気も感じられない。』

　言われれば、ますます自分がバカバカしくなって自嘲的な笑みを浮かべた。

「そうだな。」

　青が睨む。

『そんな風に変わるとはな。思ってもいなかった。』

　呆れたように、諦めたように、溜め息を吐かれる。

「…ああ。」

　返す言葉も出ない。

『このまま進んでみろ、酷い結末が待ってるぞ。』

　確かにそうだ、自分だってそれはわかっている。

「でも、もう戻れない。」

　もはや自嘲的な笑みを浮かべる気すら失せた。

『まぁ、精々頑張れよ。』

　青は口を閉ざす。
姿も見えない青の気配は、完全に消えていった。
残ったのは風の音と草が騒ぐ音だけ。

「いた！クリソコラ－！」

　懐かしい声が、遠くから聞こえてきた。
こんなに明るく話す青緑は、いつぶりだったろうか。