繊月が閉じる時【宝石の国】 (ページ26)

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水面に映る影ページ26

「やめろ！こんな事してる場合じゃない！」

叫ぶボルツの目の前に居るのは、二本の櫛を両手に持ったジルコン。
あの2人仲が良いんだなと、そう思っては無意識に笑みが零れる。
隣にいるダイヤの顔が気になり、視線を移せば楽しそうに笑っていた。
悲しそうな顔をしているのではないかと思ったが、笑っていて安心する。

「仲良いなぁ。」
「ええ、本当に。」

ふふ、とダイヤが笑う。
＿＿とその時、少し離れた所に居た先生の元にベニトアイトとネプチュナイトが遠くから慌てた様子で駆けてきた。

「黒点が出ました！しかも三器同時です！」

　目を丸くする、三器同時は教わっただけで初めてだ。
緊張で四肢が小さく震える、が。アマゾナイトの事を思い出し強く拳を握る。
いつまでも怖がっていてはダメだ。
前を向き、まさにアマゾナイトのような青い空を見つめる。
雲1つない海のような空は、水面に不穏な影を静かに映し出していた。

「ダイヤとクリソとイエローとベニトは北東。ボルツとジルコンは南南東を。」

はいと返事をし、他の三人と共に北東の月人へと走って向かい始める。
手は、腰に備えられたハサミの持ち手を強く握っていた。

＿＿

「なんっか僕ばっか狙われてない？！ダイヤ族居るのに！」

　攻撃を剣で防ぎながらベニトアイトが焦ったように言う。
一方あまり狙われていないダイヤ族2人は、

「僕らの魅力が足りないのかしらー？おにいさま～。」
「ベニトは可愛いからなあ。」

この二人、全く危機感がないというか、ふわふわしている。
仲良く笑う姿はかなり危なっかしい、だから先生はこの二人を組ませない訳だ。
呆れたように大きく息を吐く、だが反対に顔は微笑ましさからか笑みを浮かべていた。

それにしても、このハサミ攻撃を防ぐのには向いていないな、と。
金属が叫ぶ音を耳に入れながらただそれだけ思った。

「…お、ボルツがかなり詰めてきたな。急がないとどやされるぞ。大胆かつ慎重に……」

被せるようにベニトアイトが、

「あ。」

　と声を漏らす。
共に耳に入ったのはカキン、といった音だ。
＿＿ベニトアイトが跳ね返してしまった矢によって月人の頭が跳ね飛ばされていく。
直後、月人は見事に霧散していった。

「……これは、作戦失敗だな。」

頭を掻きながら、眉を歪めて言う。
南南東に見える月人は、黒い花の蕾の様に身を丸め閉じていた。