2『呼吸するように歌っていた』 ページ2
中学生になってから。
合唱部に入った。
元から歌うのが好きで、他にやる事もないから入った。
部活の仮入部の時。
先輩は優しそうで、丁寧に熱心に教えてくれた。
一緒に入る友達は居なかった。
友達が居ないわけじゃない。
合唱部に興味がない子が多かっただけ。
だけど、楽しかった。
同時に入った同級生も、皆んな優しくてすぐ仲良くなった。
本当に、楽しかったんだ。
「ここのリズム打ち、やってみて」
____あれ?
何かが壊れた。
「一人ずつね、その次は歌ってもらうから」
____合唱部だよね。
「次、貴方の番だよ。はい、で入ってね」
酷く淡白で、冷淡な声が私の耳を撫でた。
一人、一人で歌え。
____合唱部は、誰かと一緒に歌うから。だから。
声が震える。先輩達の視線が刺さって、声が出ない。
駄目だ、リズムが取れない。
メトロノームの音が、聞こえない。
合唱部は、一人で歌うんじゃないでしょう。
みんなと、合わさって歌うんでしょう?
一人は怖いよ。
「あのね、リズムも合ってないし、音程もずれてる。メトロノームに合わせて。それに声が小さい」
「一年下手だねぇ」
____三年生の先輩が言う。
「パート練で何やってたの」
____練習してたんです。
先輩達がサボってる中、私達一二年生は必死に。
貴方達が、雑談してる中、私は必死に。
三年生が上手いのは、経験があるから。
私達より二年早くやってるんだ。上手いのは当たり前。
______当たり前。
その当たり前を、今、物凄く覆したくなった。
同級生は皆んな先輩達の言葉に傷ついてる、分かってる。
私だけ泣くわけにはいかない。
多分、今泣いたら私が一番辛くなる。
私は、口元を上げた。
いつしか、笑うと楽しくなると聞いたから。
だから。
口角を上げていれば、泣かないと思った。
______でも。
私の涙は、私の意思に反して溜まっていく。
泣くな。泣かないで私。
お願いだから、涙を流さないで。
「どうしたの……?泣いてるの?」
同級生に指摘された。
でも、私は目を擦って言った。
「眠くて……欠伸が」
______一人でと言う言葉が。
______怖いと感じたあの日。
毎日毎日、呼吸するように歌っていた私は。
その日から歌う事が辛くなった。
心にヒビが入ったんだ。
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みのみの(プロフ) - ゆっくりね。 (2019年8月20日 21時) (レス) id: 8f8d558b6e (このIDを非表示/違反報告)
白波心(プロフ) - みのみのさん» そうですね。頑張らなくてもいいんですよね。ありがとう。アーヤは本当に優しいです。これからも優しく接してくれます。それで後々問題が起こるけれど……貴方にコメント貰えて、少し肩の力を抜いてみようと思いました。 (2019年8月20日 21時) (レス) id: 4a6ed9dad0 (このIDを非表示/違反報告)
みのみの(プロフ) - 思い出せてよかったね。頑張っていきしようとすると、もっと苦しくなっちゃうよ。辛い時は、学校休んでもいいんだよ。辛い、苦しい、そんな時は、ズル休みなんかじゃないのよ。アーヤは、優しいね。 (2019年8月20日 19時) (レス) id: 8f8d558b6e (このIDを非表示/違反報告)
白波心(プロフ) - みのみのさん» ありがとう。なんて言ったらいいのか、口下手だから分からないけれど、ありがとうございます。腹式呼吸……久し振りにやりました。思い出させてくれて、ありがとう。 (2019年8月20日 18時) (レス) id: 4a6ed9dad0 (このIDを非表示/違反報告)
みのみの(プロフ) - 息を吸って、お腹にためて、ゆっくり吐き出したら落ち着くょ。腹式呼吸っていうんだ。よかったら、調べてみてね。我慢はしないで、泣きたいときに、泣いてもいいよ。 (2019年8月20日 17時) (レス) id: 8f8d558b6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白波心 | 作成日時:2019年7月10日 23時