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『……あ、りがとう』
「いーえ、ってかまた勉強してんの。これなに？数学？うわー、見てるだけで頭痛ぇ」
私の手に返ってくるはずだったそれをパラパラとめくり出した彼は、ページいっぱいの数式を見て顔を歪めた。
『…ふ、深澤くん、それ返して』
「深澤くん？なに、いつからそんな呼び方するようになったの」
『っ、別になんて呼ぼうが関係ないでしょ』
みんな見てる。
廊下にいる人が、私と彼を見てる。
彼らにとって私が誰か他の人と話してるのはとても珍しいもので。
しかもその相手が彼だから尚更興味の対象になってしまうのだろう。
最悪だ、なんでこんなとこにいるの。それで、なんでたまたま拾っちゃうの。…てか、はやく返してよ、教科書。
ぶつぶつと頭の中で不満を垂れていた私を、なんでか少し不機嫌な彼が覗き込む。
「最近会ってなかったからそんなよそよそしくすんの？」
『別にそんなんじゃ』
「ふうん。あ、てかさ、今日おまえん家行ってもいい？」
『は！？なんで急に』
「久しぶりに顔見たらもうちょっと話したくなったから」
何を考えてるのかわからない瞳が私に向いて、じいっと見つめた。
久しぶりに家族以外の他人とまともに視線を交わしたからか、ドッドッと心臓が変に脈打つ。
しかもちょうどこの前お姉ちゃんと彼の話をしていたばかりだったからか変な緊張感が私を包んで、どうしても目線が泳いでしまう。
「ふっか、お前何してんの。はやく行こーぜ」
「あぁ、わりぃ今行くわ」
向こうのほうで友達らしき人が彼を呼ぶのが聞こえた。
その声に後ろを向いてはは、と軽く笑ったあと、彼の手によってぽんっと私の手のひらに乗せられた教科書。
「じゃあまた後で」
『え、ちょっと…！』
私の制止には応じず、ひらひらと手を振った彼が、向こうで待っている友達の輪の中に入っていく。
急だ。急すぎて頭が追いついていかない。
家に来る？なんで？
てか私に拒否権はないの？
明らかにヒエラルキーの上の方にいそうな人たちに紛れた、昔とは違うその後ろ姿を見ながら。
答えの見えない問いに頭を悩ませて、私はギュッと教科書を抱きかかえた。
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こゆき(プロフ) - さゆさん» コメントありがとうございます…！更新頑張ります！！ (2020年11月29日 10時) (
レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - 楽しいです！更新楽しみにしてます(^^) (2020年11月26日 23時) (レス) id: 04307595de (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - (名前)ひなさん» いつもありがとうございます…！自己満の拙い作品ですが、好きだと言っていただけて本当に嬉しいです！さらに楽しんでいただけるよう、更新頑張ります…！ (2020年10月18日 0時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)ひな(プロフ) - うわあ新しい作品もめちゃめちゃきゅんきゅんします…！！ほんとにこゆきさんの小説好きすぎて…毎日見てます！！しぇあはうすの住人もハニーシュガーの誘惑も楽しみにしてます＾＾ (2020年10月12日 16時) (レス) id: cc80ef896f (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - さーたんさん» コメントありがとうございます…！描写とても考えながら書いているので、そのように言っていただけてとても嬉しいです！今後もよろしくお願いします…！ (2020年10月11日 21時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こゆき
| 作成日時：2020年10月5日 23時
