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「えー、怪しいなぁ……って、あ。やられた」

『(やった、やっと抜け出せた)』



彼が油断してる隙に力任せに振ったらやっと彼の手から解放された私の右手。

あぁ、やっと戻ってきた。


帰ってきた右手を摩りながら、手を振ったはずみで肩からずり落ちたスクールバッグを持ち直して私は通学路を歩き出す。

これ以上ここで立ち止まってたらまた変な目で見られちゃう。…私はいいけど、辰哉くんはダメだ。



「おいおい、置いてくなよー」


私が彼を置いて歩き出したことによって一瞬開いた距離は、そのあとすぐに彼が私を追いかけてきたからあっという間に縮まって。

辰哉くんは当たり前のように私の隣に並んでぺらぺらとお喋りを始めた。



よくよく考えてみれば、2年くらい辰哉くんとはちゃんと話をしていなかったように思えるんだけど、

そのブランクを感じないくらい彼はフラットに私に話しかけてくるから、なんか不思議だ。



まるで彼の中では私と彼の関係はずっと昔のまま、みたいな感じ。


……私の中ではもう、あの頃とは違うんだけどな。

彼の中では続いてるその関係は、私にとっては過去のものだ。



今のわたしは彼からは遠いところにいて。

決してこんなふうに隣に並んで歩いているような人間じゃない。


私たちは全く別の方向を向いて歩いてるはずなのに。


それなのにその道に突然また辰哉くんが現れた。

突然現れて、そして私の心の中に"過去"を呼び戻そうとしてくる。



きっと数日で飽きるだろうと思っていたのに、こうしてもう1週間が経っても辰哉くんは私に関わることをやめようとはしないから、

最近は彼の存在がちらついて全然勉強に集中できてないし、正直このままじゃほんとにダメだと思うのに。



だけどその反面、

……心のどこかで彼のいるこの時間が楽しいと思ってしまってる私もいる。


これは本当に困ったことだ。今まで築き上げたものがぐにゃりと曲がっていってしまうから。

…しっかりしなきゃ。





「A、」


校舎に入って別々の靴箱からまた合流して。

そして私の教室の前までやってくると、辰哉くんはその足を止めてこっちを見た。


「じゃあ、またあとでね」


……あとで?

……って、なんだ?


よくわからない言葉を残して今日はやけにあっさりと自分の教室へと向かった彼に、私は首を傾げながらその後ろ姿を見送る。


───結局、その"またあとで"の意味を知ったのは、それから数時間後のことだった。


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こゆき(プロフ) - さゆさん» コメントありがとうございます…!更新頑張ります!! (2020年11月29日 10時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - 楽しいです!更新楽しみにしてます(^^) (2020年11月26日 23時) (レス) id: 04307595de (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - (名前)ひなさん» いつもありがとうございます…!自己満の拙い作品ですが、好きだと言っていただけて本当に嬉しいです!さらに楽しんでいただけるよう、更新頑張ります…! (2020年10月18日 0時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)ひな(プロフ) - うわあ新しい作品もめちゃめちゃきゅんきゅんします…!!ほんとにこゆきさんの小説好きすぎて…毎日見てます!!しぇあはうすの住人もハニーシュガーの誘惑も楽しみにしてます^^ (2020年10月12日 16時) (レス) id: cc80ef896f (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - さーたんさん» コメントありがとうございます…!描写とても考えながら書いているので、そのように言っていただけてとても嬉しいです!今後もよろしくお願いします…! (2020年10月11日 21時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こゆき | 作成日時:2020年10月5日 23時

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