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「彰は冷にとって嫌いな人でしょ」

“嫌いな人”か、
思い浮かぶ人がいない。
私幸せに生きていたんだな。

でもそんな言葉が映画で通用するはずがない。

だったら、冷目線で考えるしかないんだ。
…冷はどんな気持ち?

感情を乱されて、動揺した。
それを隠したくて強い言葉を発したんだ。

きっと冷は、彰が怖い。
自分の弱さを誰にも知られたくないから。

『お、水沢ちゃんいい感じになってるね。じゃ撮り直そうか、3,2,1,はい!』

…監督の声が遠くに聞こえる。

「宮永さんって冷たいよね、なんで周りに優しくしないの?」

__なんでそんなことを言うんだ、
__お前にその感情が分かるはずないだろう、

「あなたには関係ない、何も知らないのに口出ししないで___」

知られたくないの。

『カット!』

監督さんの声で我に帰る。

『水沢ちゃんすごく良くなったよ!次もその調子で行こう』

「あ、ありがとうございます」

褒められた。

「水ちゃんめちゃくちゃ迫力あった、俺怖かったよー!」

満面の笑顔でそう言ってくれる平野っち。

…今私、“水沢Aを離れていたよね?
宮永冷になれていたよね?

そう聞きたくなる。

それが俳優にとって当たり前なのは分かってるけど、
私はその感覚を味わったことがなかったから。

「…私、できたんだ」

思わず呟きが漏れた。

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作者名: x他1人 | 作成日時:2020年8月11日 0時

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