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喧嘩していた両親と仲直りをし、共に数年ぶりに日本へ戻った。

そして、私の人生が変わり始める。



「うぇ……」



気持ち悪くなることが増えた。吐いてしまうこともあって、仕事にもあまり集中できない。

それがあんまり続くから病院にかかったら、産婦人科へどうぞと言われて。まさかと思った。



「おめでとうございます。妊娠7週目です」


「は……」



嘘でしょ。そんなことって。

受け入れられないまま祝福され、今度は旦那さんも一緒になんて言われて診察が終わり、ぼんやりとしながら病室を出る。

頭の中はただ、両親にどう説明するかということだけ。

妊娠。7週目。命が宿ってから7週間。

確か堕ろせるのは21週目までだ。そうだ、それまでに堕ろす選択を医師に伝えれば。



____本当に?



そっと、下腹をさすってみる。まだ膨らみなんてない、いつも通りのぺったんこなお腹。この中に、新しい命が必死で生きている。

診察室を出てすぐの長椅子に腰掛けて前屈みになり、頭を抱える。


どうしよう、堕ろしたくない。


相手は十中八九あの男。いま世界中のクラブが欲しがるあの天才ミッドフィルダー。

でも相手がどうとか、そういう話じゃない。相手がこの世で1番のブスだとしても私はこの子を堕ろしたくないと思っただろう。

だって、そんなこと出来る訳ない。

小さな命がこの身に宿ったことは奇跡だ。奇跡以外の何ものでも無い。必死で生きているこの小さな命を、私の選択で殺すだなんて。


ポロリと溢れた涙を拭う。

決めた。私はこの子を産む。産んで、育てる。父親がいないことは可哀想だけれど、それでも余りあるほどの愛を注いで育ててみせる。

それから私は、糸師冴から隠れて生きることを決意した。



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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2023年9月2日 1時

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