冴ぴ 毒親 ページ11
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その人はいつもそこにいた。
海辺の防波堤の上、潮風に舞い上がる髪が涼しげな目元を隠してしまうのを、少し残念に思いながら見ていた。
不意に、彼がこちらに気付く。
ゆっくりと顔がこちらへ向けられる。
冷たい色を滲ませたターコイズブルーが、私を射抜いた。
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1.
「Aはお母さんの味方よね?」
「もちろんだよ。ママ」
あそこに帰りたくない。息が出来なくなりそうなあの空間にいたくない。
でも母が父から離れる事を選ばないのは、私を育てるためで。
仕方がないから家を出る時間を早く、帰る時間を遅くした。
学校が終わってすぐに帰ると早いから、海辺でただ海面を眺めてぼーっとする。その時間だけは何もかもを忘れて、自由になれる気がした。
ーー彼はいつもそこにいた。
赤みがかった髪を潮風に揺らして、私と同じようにただじっと海を眺めていた。
話し掛けたことはなかった。別に話しかける理由も無かったし、1人の時間を過ごそうとわざわざここまで来ているんだし。
でもその日は、その男の子が私の方を見たから。
「あなたも、帰りたくないの?」
つい、そう聞いてしまった。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2023年9月2日 1時