ひきこもりでも異世界冒険がしたい！【歌い手】

あほ面 ページ17

(うらたside)

ぱたぱたと足音を響かせながら声の主は走ってくる。

??「ねーねー、てるー!!」


甘く柔らかだが元気そうな声。磨きあげられた床に落ちる影から、まふてると同じ年頃の少年だと分かる。

栗色の髪と、チョコレート色の垂れた犬耳。

茶色のパーカーに短パン、それから赤い首輪。

くいっと上げられた口角と、赤らんだ頬。


彼は俺たちの輪の中心で立ち止まると、真っ黒な瞳で俺たちのうち1人を捉えて叫んだ。

??「あーー!!さかたんだー!!」

えっ

さか「えっ…?」

??「わーい皆初めまして!!ぼく、ケンちゃん!!」

少年はケンちゃん、つまり坂田のマスコットキャラクターだった。

確かに言われてみれば坂田っぽかった。自由奔放。天真爛漫。意味不明。絶対火星人。


さか「うそ…ケンちゃん…?」

ケン「うん!!やっとさかたんに会えてぼく嬉しい!!」

困惑する俺たちを無視して坂田の周りを跳ね回るケン。流石の坂田も戸惑っていてちょっと面白い。


坂田の周りを一通り跳ね回ったあと、彼はぱっとまふてるに向き直った。

ケン「皆変身してる!!ねー、これも説明してあげた方がいいんじゃない?」



うら「変身…?えっうわっ」

ケンの言葉に驚いて周りを見ると、

そら「えぇ…皆何それ」

紺色のふわふわの髪を揺らし、空色の目を見開くそらるさん。

まふ「えっ、はぁ?どういうこと??」

光の筋のような白銀の髪をかきあげ、深い赤色の瞳を泳がせるまふ。

さか「うおお!!何これめちゃめちゃかっけー!!」

まふとは対照的に目が痛くなるほどの明るい赤色の髪と瞳を輝かせる坂田。

つまり俺たちは、それぞれのコテキャラの見た目になってしまっていた。


まふ「何これ、どういうこと?」

てる「異常はすぐそこまで迫って来ておるということじゃ」

まふが眉を顰めると申し訳なさそうに小声で言うまふてる。

てる「ご主人たちの世界でいう"バグ"という奴じゃな、ご主人たち自身もバグの一環ではあるが」

うーん、と話に着いていけない坂田が首をひねる。


ケン「まぁそれはおいおい説明するとしてさ! ぼく、すっごいニュースもってきたよ!! 」


褒めて褒めて、とばかりにケンはにこにこ顔で坂田の真っ赤な瞳を見つめて言った。




ケン「さかたんのお友達、すぐそこに居るって!」

明けかけていた空に、再び三日月が昇り始める。

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