ひきこもりでも異世界冒険がしたい！【歌い手】

化け物 ページ11

(うらたぬきside)

湯気が見えそうなほど荒く熱く、そいつは息を吐き出した。ゲームでしか見たことがない明るい青色の毛並の背中が上下する。

狼のような、三つ首のその化け物の6つの目は、俺たちを捉えている。

瞳は色とりどりで、全ての目がオッドアイだった。オッドアイ、と形容するのが果たして正しいのかどうか知らないが。


6つの目が順繰りに何かに染まった次の瞬間、それはまるでスローモーションのようだった。


唸りをあげながら突進してくる化け物。慌てて逃げ出す俺と坂田。

幸い2人ともひきこもりといえど運動神経は悪くない。


化け物は怪我を負っているかのようなおぼつかない足取りで俺たちを追ってくるものだから、差はみるみるうちに広がった。


だけど、

??「ううっ、うっうあぁ、うあた、さ…」

悲しげなその掠れた声で、名前を呼ばれた気がして。

つい振り返ってしまった。化け物は狂ったように突進してくる。


さか「うらさん何ぼーっとしてんの!!食われてまうで！」

引き摺られるように地下道を出ると、俺はこの近くに歌い手ハウスがあったことを思い出した。たまたま今日は鍵も持っている。


駅から出た瞬間、そう判断し歌い手ハウスに逃げた俺。

きっとそらるさんの家を思い出したんだろう、逆方向に逃げた坂田。


化け物は、坂田を追った。

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