飛蜜 ５ ページ5
「ん？
んっとね、最初は父さんに勧められたんだ〜。興味無かったんだけど、調べてくうちに楽しそうだし、日本じゃ吸収出来ないことたくさん学べるなって」
そんな風に話す飛貴の顔が、見れない。握りしめるスカート。俯いた。
「それって……日本じゃ、ダメ、なの？」
「……うん。ここ卒業したら、絶対成長して帰って来れるから。
だから第二志望以降はこっちの学校なんだけどね」
目頭が熱くなっていく。そんな私の様子に気づいたのか、飛貴は心配そうに顔をのぞき込んだ。
行かないで、なんて言えない。言えるはずがない。離れたくない。ただの片想いに、ワガママなんて言えない。
『第二志望以降はこっちの学校』。つまり、そこ落ちたら。
飛貴は、ここにいるんだ。
「……失敗しちゃえば良いのに」
「ぇ……？」
全ての時が止まる。全てが無音になる。ポタリと手の甲に落ちた涙で、ふと我に返った。
今。今、私なんて言った？今。嫌だ、嘘。私、私、私。
「ち、が……違う、の。ほんと、ごめ……違くて、ちが……」
「待って、A落ち着いて」
「ごめん、なさ、ごめんなさ……」
気持ち悪い。自分が。何てこと言ったんだろう。将来何をやりたいかも決まっていない私。しっかりやりたいことを見据えてる飛貴。
どの口が。『落ちれば良い』って言ってるの。
「ほん、とごめん。ほんとに、ごめん。
……きょ、は帰る。わざわざミルクティー出してくれたのに、ごめんなさい」
「A」
駆け下りた階段。もう、ここには来れない。
ー翌朝。真っ赤に腫れた目と、一気に衰退した食欲。どん底の気分で上履きを取り出そうとしたとき。
「……A？おはよ」
ビクッと震えた肩。おどおどした声の主は、見なくたってわかる。返事もせずに、私はその場をそそくさと逃げ出した。
次の日も、また次の日も。何度も話しかけようとしてくれた。でも、避けてしまった。罪悪感から、抜け出せなかった。
いつしか飛貴も私に関わろうとしなくなり。二人の間には、大きな大きな溝が出来た。嫌われたんだろうな。絶対そうだ。じゃなきゃおかしい。
その溝も放置したまま、私たちは三年生になってしまった。
「天川さん、おっはよ〜」
「那須くん。おはよ、同じクラスなんだね」
そっか、那須くんと同じクラスだったのか。飛貴とは別々のクラス。体育の時間すら同じにならないくらい、離れてしまった。
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ミント(プロフ) - どのお話もとても素敵で、短編なのに引き込まれる世界観が大好きでした！おつかれさまでした！ (2019年1月14日 15時) (
レス) id: e20fb3d910 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆちゃん(プロフ) - 私の大好きなマジョマリがまた読めるなんて感激です（ ｉ _ ｉ ）楽しみです！頑張ってください！ (2019年1月1日 2時) (レス) id: f9588c4e4d (このIDを非表示/違反報告)
真優(プロフ) - ゆうぴのお話で、ゆうぴが一個上の先輩で、主人公が後輩の関係で直接会うとあまり話せないけどラインとかだと話せるみたいな仲でクリスマスに後輩が告白する的なものが読みたいです！ (2018年12月24日 2時) (レス) id: f8f4960291 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - お忙しい中お返事ありがとうございます(TT)！わぁ、そうだったんですね…！どれも素敵なお話だったので残念で寂しいですが、お返事頂けて嬉しかったです！これからも楽しみに読ませて頂きます☆ (2018年11月22日 22時) (レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
れなさん(プロフ) - りんさん» りんさんはじめまして！いつもありがとうございます(*^^*)実はDeuxの方削除してしまいました……。もし好きな作品だったら本当に申し訳ないです(；_；) (2018年11月21日 19時) (レス) id: c72a49e4f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れなさん
| 作者ホームページ：れなちゃん(@pinky_lovers98)さんをチェックしよう https://twitter.com/pinky_t17?s=...
作成日時：2018年5月25日 17時
