Dandelion (ページ29)

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受け入れがたいくらい嘘みたいな本当の話を聞いた丈くんは俺達に怒ってたけど、目を覚ましたはっすんを見た時泣きそうな表情だった……

正直、はっすんにとって『かずくん』も『名無し』も記憶はなくとも実害はあまりない。

問題は『かずや』だ。

俺と正門も打ち解けるまで時間かかったしネガティブな性格だけど根はいい子だと思ってる。

でも、はっすんの身体が傷つくのは見てられない。

それにODだけではない。

今後丈くんがそのことを知ったら…？

ちょうど前方の信号が赤に変わる。

赤…もし仮にただでさえ血が嫌いな丈くんがあんなの目の当たりにしたら……

色々考えているとスマホが鳴った。

ウォッチの方を確認すると正門だ。

《はっすんが焼肉食べたいらしいから焼肉弁当頼むわ〜！》

いやいや、はっすんはまだ食えんやろと口に出してツッコんでしまい思わず笑ってしまった。

ほんまにはっすんは人を笑顔にする天才やと思う。

はっすんは俺らにとって向日葵みたいな存在……

いや、違う。

たんぽぽだ……

春頃に雑誌の撮影で公園に行った時に自分の撮影が終わったから次の丈くんを呼びに行ったらはっすんが丈くんになにか渡して走り出して

｢おいっ、衣装汚すなよ！｣

｢はーい！｣

ってやり取りの後、丈くんが他のメンバーの所にも走って行ってはしゃいでるはっすんを眺めてるもんだから

｢次の撮影は丈くんやって。あ、ちなみにはっすんから何貰ったんです？｣

と聞くと左手に持ってた白いたんぽぽを見てくるくるっとしながら

｢なんか、大橋ってたんぽぽみたいよな｣

ってぼそっと言うもんだから思わず

｢え！？急な丈橋！？｣

って驚いたら怪訝そうな顔をして

｢何でもないわ！｣

と言って撮影に行っちゃったけど紙面のソロカットではしっかり白いたんぽぽを持った丈くんがいて密かにニヤけた記憶がある。

でも、改めて考えてみれば丈くんの言う通りだと思う。

春の陽気にぴったりな優しい雰囲気や笑顔、ふとした時に見かけると嬉しくなる感じ、ふわふわしてる感じ、でも根はしっかりしてる所とか。

丈くんははっすんのこと分かってる。

あの二人ならきっと大丈夫。

今までだって乗り越えてきたんやし。

ちょうど家に着いた俺はそう言い聞かせて車を降り玄関に向かいながら正門にトークを返して帰宅するなり急いで浴室へ向かった。

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