不寝の番 ページ2
____某日、午前1時30分頃。
現在は就寝兼見張りの時間。
これは「不寝の番」と呼ばれる、一晩中起きておき、徹底的な見回りをする規則である。
今夜は軍曹が「不寝の番」となる日だ。
見回りには、天王達が決めた規則がある為、決まった道を決まった方法で決まった時間配分で動く。
____とは言うものの、軍曹は天王一の気分屋。
通気口を通ってみたり、野鳥を観察してみたり、わりとフリーダムである。
「今日は明るいなぁ。ちょっと窓枠失礼しますよーっと」
真夜中の小さな太陽、月が満ちているのを不意に気に留め、少し高い位置にある窓に寄る。
「おっ、満月だ。ってことは…」
窓を開け放ち、子供が雪の積もった外を眺める時のように、顔を覗かせる。
と、一つ個室の窓が開いている。
恐らくは第六天王の兄貴の部屋だろう。
今夜は月見酒には絶好の快晴。
遥か星空からは、柔らかな光のカーテンが降り注いでいる。
…酒を常に携帯するような奴だが。
彼は一日で必ず7本は蓋を開けてしまうほどの酒豪なのだ。
酒の邪魔したら…怖いだろうな。ルートを変更。
曲がり角で踵を中心にクルリと左へ90度曲がり、足音を殺しつつも階段を降りた。
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階段を降りて向かうは、武器庫と手入れ場。
此処で武器の制作、保存、修理、改造、其の他諸々の作業__をしている。
盗まれないように、此処もしっかり見回る。
「んひひ、蒸し暑い……換気せなな」
窓のロックを指で外し、開ける。
…が、その手はなかなか離しそうにない。
気配を感じる。
何か、のたうち回るような音が__
手首のスナップを効かせ、窓を無理矢理強く閉める。
赤錆が付着した窓枠からは、耳を塞ぎたくなるような不快な音が出た。
その刹那、窓に白い何かがドンッ、と強く当たってズリズリと下へ落ちていく。
二メートルほどではあるが、窓まで少し高さがある為か、暫くすると"それ"の落下音が軍曹の耳まで届いた。
「(鳥か?それにしてはデカすぎるな…)」
不信に思い、窓にもう一度手を当てつつも、自家製の弓を構える。
すりガラスの為、物体の正体が確認出来ないのがもどかしかった。
息を深く吸い込んで、
窓を全開になるまで足で乱暴に開けると、"それ"は飛び込んできた。
まるで白蛇のような____
…めいいっぱい引いた矢を放つと、真っすぐに"それ"の喉笛を貫いた。
「怪物…」
叫び崩れ、床に伏せて動かない様子を見て、呟いた。
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劣化水銀(プロフ) - 36位…???有難うございナス!!! (2018年6月21日 22時) (レス) id: 421c0c814f (このIDを非表示/違反報告)
劣化水銀(プロフ) - 待たれてましたッ (2018年6月19日 18時) (レス) id: 691c01ec0b (このIDを非表示/違反報告)
猫犬 - ヒィッッ待ってました!!!! (2018年6月19日 1時) (レス) id: 21c60ad337 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:劣化水銀 | 作成日時:2018年6月18日 23時