第10話:君に届かない ページ10
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「ちょっと待ってよ……」
神奈川県神野区、私の居場所。
雀荘やスナックに紛れ、皆の拠り所となっていた窮屈だけど落ち着く大事なカウンターバー。
「なんで、なんでなの」
帰宅中、電車が異様に混雑していたし一般道路も交通規制がなされて、何かおかしいと思っていた。
「どうして包囲されてんだよ、みんな……」
おびただしい数のパトカーと警察官、特殊急襲部隊にプロヒーロー。
「あ、あのっ、何があったんですか」
「一般市民の方ですか?早急に避難してください!」
もうとっくに一般人なんか辞めてるわ、という言葉をぐっと呑み込んで空を見上げた。
「SMAAAAAASH!!」
平和の象徴、オールマイト。
画風が違う筋骨隆々の彼が外壁を突き破り、後に続いたヒーローが
必死に抵抗し、この状況をどうにか打開しようとする殺気が混ざった彼らの気配を感じる。
悔しさを噛み殺しながら咄嗟に裏路地へ駆け込んだ。
また、私だけ。
「何、あの尋常じゃない数のバケモノ……脳無!?」
鳴り響く銃声と悲鳴、怒号。
オクラホマスマッシュによって完全に倒壊したビル。
神野はもうめちゃくちゃだ、終わった。
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遡ること2日前。
「げ、林間合宿の襲撃って明日なの」
「えぇ。何か不都合でも?プロイビート」
黒霧は使い終えたネルドリップコーヒーのフィルターを手入れしながらAに問いかけた。
「夏季限定スイーツの発売日なんだよね〜」
ロックキャンディのように結晶化したシュガースティックをコーヒーに入れ、くるくると溶かしながら答える。
「それ、絶対行かなきゃいけないやつ?」
「私には決め兼ねます。どうでしょう、死柄木弔」
「マスキュラー、ムーンフィッシュ、マスタード......戦力は申し分無い。留守番してろA」
やった〜、と気の抜けた返事をするAは勢い良くコーヒーを飲み干し息を吐いた。
「美味しいデザート用意しておくからさ、バクゴーくん?って子にも食べさせてあげようよ」
購入を予定しているヴィタメールのグラスデザートは、マンゴーや桃、コーヒーゼリーなど夏らしく爽やかで魅力的なビジュアルが目を惹く。
「俺から好きな味、選ばせろよな」
「もちろん。shodai bio natureの夏限定ミルティペタルも買ってくるから、皆でティータイムと洒落こも〜う」
呑気で気楽で、能天気な戯言。
「紅茶はどれにしよう?アッサム、セイロン、ウバ...」
全て、壊れていく。
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乃愛(プロフ) - ほんとうに、すきです... (2021年10月3日 1時) (レス) @page28 id: 78a106acd8 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - もう好きです!あづまさんの小説!これからも読ませてください! (2021年9月27日 6時) (レス) @page23 id: 30b611b787 (このIDを非表示/違反報告)
きりん(プロフ) - すごい主人公の危うさが綺麗に表現されていて好きです!(語彙力なくてすみません) (2021年9月22日 18時) (レス) @page16 id: 7259fb1aa4 (このIDを非表示/違反報告)
御堂(プロフ) - 初めまして。こういった敵連合のお話すごく好きなので嬉しいです、前作から見ていて言葉の表現とかタイトルとか凄く綺麗で読みやすいな~と思いコメントさせて頂きました…!無理せず更新頑張ってください!楽しみに待っております◎ (2021年9月18日 13時) (レス) id: 45dbeb9083 (このIDを非表示/違反報告)
落魄 - すみません、誤字がひどいですね。最後の分はあづまさんがいいならコメントしたいのですが大丈夫でしょうか?と打とうとしたものです。支離滅裂な文章ですみません。 (2021年9月18日 11時) (レス) id: 03af4fb6da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あづま | 作成日時:2021年9月18日 1時