第31話：Margarine ページ31
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和歌山県の山奥に聳える異能解放軍本拠地、群訝山荘。
血気盛んなこの組織でAのみ、優雅にピアノを嗜む。
響き渡るは、フランツ・リストの｢愛の夢｣。
資金を有り余らせてた解放軍が彼女の凶器とも言えるオネダリに屈した結果、相当な値段のグランドピアノを買い与えた。
｢……Aちゃん、本当に何でも出来るのですね｣
｢いや、何回もミスちゃったよ｣
ピアノ弾くなんて10年ぶりくらいだぁ、と大きな息を吐いたAは優しく鍵盤蓋を閉じた。
｢小さい頃さ、今の曲を弾いた時ね。家族にめちゃくちゃ褒められたんだ〜懐かしいな｣
｢家族……Aちゃんの家族は今どこで何してるんです?｣
トガが小さくなったキャンディを噛み砕きながら問いかけ、Aは切なそうに声を漏らした。
｢全員、海の底だよ｣
その言葉を聞いたスケプティックが、目を見開きながら乱暴にキーボードを叩き、慌ただしくエンターキーを押した。
｢プロイビート、お前……｣
｢あは、ついにこの時が来ちゃったかぁ｣
比較的若年層の死柄木とトガ、スピナーは頭上に疑問符を浮かべるが、コンプレスやトゥワイス、異能解放組の青年組が｢まさか｣という顔をする。
｢十何年か前にあったよな? お偉いさん達が乗った飛行機が墜落した事件｣
｢あぁ、
｢ふふ。私が当時その飛行機に乗ってたって言ったら皆、驚く？｣
その言葉に、全員の視線がくるりとAに流れた。
｢お前、皇族の子だったのかよ｣
死柄木が捕らえるようにAの細い腰に手を回し、彼女は不敵に笑いながら頷いた。
｢そーだよ、分家だから少しも有名じゃないけど｣
｢だから苗字が偽名だったのですね｣
｢そういうこと〜、皇族は姓が無いからさ｣
トガは腑に落ちたように声を漏らしながら、新しい飴の個包装を剥がし口に放り込んだ。
｢飛行機が墜ちて溺れ死ぬ寸前に、私が複数持ってた“個性”は暴走しちゃったんだ。生存本能ってやつだね｣
私だけでも、助かりたい。
肺や気管に流れ込む海水に抗えず遠のく意識、次に目を覚ました時には見知らぬ人間に囲まれていたと話すA。
｢海外の
｢守られてんな、運命に｣
スピナーが漏らした言葉を咀嚼し嘲るように笑ったAの瞳に光は無く、やり場のない疲れが垣間見えた。
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乃愛(プロフ) - ほんとうに、すきです... (2021年10月3日 1時) (
レス) @page28 id: 78a106acd8 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - もう好きです！あづまさんの小説！これからも読ませてください！ (2021年9月27日 6時) (レス) @page23 id: 30b611b787 (このIDを非表示/違反報告)
きりん(プロフ) - すごい主人公の危うさが綺麗に表現されていて好きです！(語彙力なくてすみません) (2021年9月22日 18時) (レス) @page16 id: 7259fb1aa4 (このIDを非表示/違反報告)
御堂(プロフ) - 初めまして。こういった敵連合のお話すごく好きなので嬉しいです、前作から見ていて言葉の表現とかタイトルとか凄く綺麗で読みやすいな~と思いコメントさせて頂きました…！無理せず更新頑張ってください！楽しみに待っております◎ (2021年9月18日 13時) (レス) id: 45dbeb9083 (このIDを非表示/違反報告)
落魄 - すみません、誤字がひどいですね。最後の分はあづまさんがいいならコメントしたいのですが大丈夫でしょうか？と打とうとしたものです。支離滅裂な文章ですみません。 (2021年9月18日 11時) (レス) id: 03af4fb6da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あづま | 作成日時：2021年9月18日 1時
