第29話：アントニム・バイ・ミー ページ29
_
バターの芳醇な香りを漂わせながら遅めの朝食を始めたAが、こんがりと焼けた食パンを齧る音だけが響く室内。
｢つまんな〜い｣
｢仕方ないよ、ちょっと我慢して｣
コンプレスの膝に座り駄々をこねるA。
ちなみに昨日はエッグベネディクトを頬張っていた。
｢しかし似合うねえ、メイド服｣
｢えへ、可愛い？｣
｢可愛いよ〜、似合いすぎておじさん倒れるかと思った｣
如何わしい会話を繰り広げる2人にスピナーは溜息を吐きながらスマホに目を落とす。
Aが身に付けているメイド服は十中八九、デトネラット社が開発した対人用アイテムの試供品だろう。
時は数十分前に遡る。
｢おはよ〜皆、見て！Aのメイド服姿を！｣
｢お〜……｣
｢死柄木と荼毘が見たら、泣いて喜んだろうにねェ｣
｢なんで今日に限って秀一さんと圧紘さんしか居ないの?!｣
上機嫌にドアを開け、朝食と大量の菓子を片手に笑顔で入室してきたAの表情は影を落とし、ぷうっと頬を膨らませながら腰を下ろした。
｢危険物持ち込んでないかチェックしちゃうよ?｣
｢ふふ、圧紘さんセクハラ〜｣
後ろから抱き、わしわしと体を弄ぶコンプレスの手つきは異様に官能的で、思わずAは身を捩らせる。
｢こんなに大きいの実らせてる方が悪いでしょ〜｣
気を抜くと2人はす〜ぐにイチャつき始めるのだ。
基本止めようがないし、止めても無駄だ。逃げられない俺の気持ちを考えて欲しい。
｢勝手な行動してると、幹部の奴らに怒られっぞ？｣
｢あは、もう怒られてる〜｣
｢昨日スケプティックに小言言われてるの見たぜ｣
Aは異能解放軍との折り合いが悪く、当初は衝突を繰り返していた。
最終的に
｢てか、ガーターベルトにナイフと弾丸、内ポケットに二丁拳銃と機関銃装備できるデザインっ……どういう趣味してンの、解放軍｣
｢なんか、えっちぃよね〜。孔腔さんの指示だったらウケる｣
くすくすと笑いながらホットミルクを飲むAは｢今度聞いてみよ〜｣と呑気に言いながら、小さく
｢早くみんな帰ってこないかなぁ｣
｢昼過ぎには戻ってくるさ、多分｣
寂し気な声色で呟くAは静かに背中を預け、それを受け止めたコンプレスは彼女の額に優しく、触れるだけのキスを落とす。
｢(ったく、自由奔放すぎるよな……)｣
スピナーは困った様に眉を下げた。
_
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1194人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
乃愛(プロフ) - ほんとうに、すきです... (2021年10月3日 1時) (
レス) @page28 id: 78a106acd8 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - もう好きです！あづまさんの小説！これからも読ませてください！ (2021年9月27日 6時) (レス) @page23 id: 30b611b787 (このIDを非表示/違反報告)
きりん(プロフ) - すごい主人公の危うさが綺麗に表現されていて好きです！(語彙力なくてすみません) (2021年9月22日 18時) (レス) @page16 id: 7259fb1aa4 (このIDを非表示/違反報告)
御堂(プロフ) - 初めまして。こういった敵連合のお話すごく好きなので嬉しいです、前作から見ていて言葉の表現とかタイトルとか凄く綺麗で読みやすいな~と思いコメントさせて頂きました…！無理せず更新頑張ってください！楽しみに待っております◎ (2021年9月18日 13時) (レス) id: 45dbeb9083 (このIDを非表示/違反報告)
落魄 - すみません、誤字がひどいですね。最後の分はあづまさんがいいならコメントしたいのですが大丈夫でしょうか？と打とうとしたものです。支離滅裂な文章ですみません。 (2021年9月18日 11時) (レス) id: 03af4fb6da (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あづま | 作成日時：2021年9月18日 1時
