落ちてきた子 ページ5
──すごい速度で落ちている気がする。
風の音しか聞こえない。
落ちていることを認識したら、頭がいたくなってきた。
嫌な思い出が一気によみがえる。
お父さんに目が見えない子なんて要らないって言われたこと。
お母さんに普通の子がよかったとって言われたこと。
学校の友達に気持ち悪いって言われたこと。
近所の人たちに目が見えないんだって笑われたこと。
…でも少しだけいいこともあったかもしれない。
近所の公園に捨てられていた子猫が私になついてくれたこと。
お母さんが私に白杖をくれたこと。
お父さんが誕生日に点字の本を買ってくれたこと。
そう思うと、悪いことばっかりでもなかったかもしれない。
なんだかんだで私のことを思ってくれていたのかもしれない。
みんなの気持ちはわからないけど。
──全身に強い衝撃が走る。
なにかにぶつかったのか?
いや、下についたのか。
不思議なことに痛みを全く感じない。
…衝撃のあまり動けないが。
あんなに深い穴から落ちたのに、死なないのか。
人間って思ったよりも強かったんだ。
すこしずつ痺れがとれてくる。
…たぶん動ける。
周囲を確認しながら起き上がる。
どうやら花を下敷きにしていたらしい。
私には見えないが、きれいな花なんだろう。
細い茎で私を支えてくれた花に罪悪感を覚えた。
──ごめんね。
残念ながら死ぬことはできなかったが、もうここから出ることもないだろう。
それに、地上で言い伝えられている限りだとモンスターは凶暴だ。
その辺をうろついていたら殺してくれるかもしれない。
そのためにも、まだ少し痺れの残る体を動かして、先へ進んだ。
今日のアンテキャラ
ガスター
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作者名:葉月色葉 | 作成日時:2022年8月1日 21時