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もしも、伝説の通りの大きな穴があるのなら。

私は死ねるのだろうか。

やっぱり伝説は伝説で、本当は穴なんてないのかもしれない。

あってほしいな、なんて思いながら私は進んでいく。木々のざわめきと共に。


山頂の景色はどんな感じなんだろう。

…目が見えればよかったな。

──木々が少なくなってきた。もうすぐ山頂なのだろう。


それからしばらく歩いた。完全に木がなくなった。

山頂についたのだろう。

少し嬉しくなって、頬が緩む。

少しだけ回りを探索してみよう。


…危ない。落ちそうになった。

さすがに覚悟を決めていないのにうっかり落ちて死んじゃった、なんて情けないのはいやだ。

ギリギリ止まれてよかったと、胸を撫で下ろした。


穴の外周を回ってみたところ、想像の4倍は大きかった。

伝説が本当だったことに安堵する。

もし伝説と違ったら、途方にくれて森の中をさ迷う羽目になっていただろう。

それにしても、こんなに大きな穴が自然にできるものなのだろうか。

穴の底から吹き抜けてくる風は強い。

どれだけ深い穴なのだろう。

これからここに落ちると思うと、少し怖くなってきた。

だが、今さら怖いとか言っていられないし、とりあえず心を落ち着けよう。


──ふと、穴の前で考えた。

死んだらどうなるんだろう、と。

幽霊になって永遠に地上をさ迷う羽目になるとか。

それとも天国があって、花が咲き乱れる楽園で、楽しく過ごせるのだろうか。

もしかしたら、なにもない真っ暗闇の中で永遠に眠り続けるのかもしれない。


そんなことを思うと、やっぱり怖い。

なにもなくなってしまうようで。


せめて目が見えればなにか変わったのだろうか。

もしかしたら、なにも変わらないかもしれない。

それでもやっぱり、思ってしまう。


みんなが見ていた景色を、たった一度でも見られたら。

蔑まれず、暴力もない、普通の女の子の暮らしができたなら。

私は…。


「もし来世があるなら、普通の人になりたいな。」


そう言って私は、身を投げた。

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作者名:葉月色葉 | 作成日時:2022年8月1日 21時

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