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しばらくすると、完全に足音が聞こえなくなった。

『逃げ切れた……の?』

光「そ……そうみたい、です……」

私を抱いたまま長距離を走ったせいで、光くんは体力をかなり消耗していた。

光くんは私を下ろすと、壁にもたれて座りこんだ。

『光くん、ありがとう……』

私がお礼を言うと、光くんは呼吸を整えながらも微笑んだ。

光「いえ。これくらいどうってこと………うっ」

『光くん!?』

突然うめき声を上げた光くんに、私は慌てて近づく。

光「だ、大丈夫です……なんにもありませんよ」

そう言って隠そうとする光くんだが、腕を押さえて痛々しい表情をしている時点で、すでにバレバレだ。

『誤魔化してもだめ。ちゃんと見せて』

私が叱るように言うと、光くんは観念したのか、おとなしく腕を見せてきた。

『っ!!』

彼の腕を見れば、かなり大きな傷ができていて、血がにじんでいた。

『ど、どうしたの……?これ……』

光「たぶん、青鬼です。さっき横を通ったときに、やられたんだと思います」

腕を引っ込め、目をそらして私に話す。

光「これくらい大丈夫ですよ。心配しないでください」

口ではそう言っているが、腕を動かす度に顔を歪めている。

あきらかに我慢していることが見え見えだった。

『だめ。ちゃんと手当てするから、待ってて』

私は自分のハンカチを取り出し、折り畳む。

『とりあえず、出血だけでも止めないと……!』

傷口にハンカチを乗せ、外れたりしないように少しきつくしばる。

応急処置を続ける私を、光くんは黙って見つめていた。

『……よし、これで大丈夫』

光「すみません……ありがとうございます」

申し訳なさそうに言う光くんに、『気にしないで』と返す。

『ごめんね、光くん』

光「なんでですか?」

唐突に謝ってきた私に、光くんは問いかける。

『その傷、私のせいで……だから……』

光「いいんです」

私の言葉を遮るように、光くんは優しく言った。

光「俺はAさんが無事なら、それでいいんですよ」

『光くん……』

そう言って、光くんは私の頬に手を当てた。

光「だから、そんな顔しないでください。Aさん」

俺は笑ってほしいです、と光くんは困ったように眉を下げて笑う。

私はそれに答えようと、涙をこらえて笑顔を作って言った。

『私を守ってくれて、ありがとう。光くん』

光「どういたしましてです。Aさん」

私が笑ったのを見て、光くんも笑って言ったのだった。

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キラキラヒロト - 青鬼は、ゲームで知ったんですけどここまでリアルにつくられていて、凄いです!好きな人が殺されるのは、悲しかったけど続きが楽しみです! (2020年1月12日 19時) (レス) id: e853801cfa (このIDを非表示/違反報告)
Yニャン - ルーミー・リンドゥーさん» コメントありがとうございます!読み応えがあると言ってくれてとても嬉しいです!更新も頑張っていくのでよろしくお願いします! (2019年10月13日 10時) (レス) id: 0e74a4daf4 (このIDを非表示/違反報告)
ルーミー・リンドゥー - ストーリーがとっても面白く読み応えがありますね。更新頑張ってください! (2019年10月13日 6時) (レス) id: 8b75577298 (このIDを非表示/違反報告)
Yニャン - ゆーみやンさん» はい!お互いに頑張りましょうね!あと、これからもこの作品をよろしくお願いします!ゆーみやンさんの作品も読ませていただきます! (2019年10月12日 23時) (レス) id: 0e74a4daf4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみやン(プロフ) - Yニャンさん» マジですか!????? う、嬉しい……ですありがとうございます!!!!。・゜・(ノД`)・゜・。 はい!頑張りましょうね!( *´艸`) (2019年10月12日 19時) (レス) id: cef1a7a657 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:にゃんたまファシル | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年9月15日 14時

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