Honey Citrus ３

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「なんで……っ、」




なんで北山さんなの……。







追い掛けてきたのが、


さっき呼び止めようとしてた藤ヶ谷さんだったら良かったのに。









そう考える間もなく







「今の…、見てたよな？」




「……っ…！」




「その顔だと当たりか、」







私の腕掴んで、


信号は青に変わったのに

進ませてくれない北山さん。








……え、なんで？




立花さんは？







色んなことが頭を巡るのに









「今の、まじで誤解だから、」



「な、何が誤解なんですか……？」







やだ…北山さんの顔見ると泣いちゃいそう……っ。







私を見下ろすその視線が、


こんな時に限って


溶けそうになるくらい甘くて。






胸がぎゅ…って締め付けられる感覚。









「…怒ってんの？」




「……怒ってます、」








…怒ってるに決まってるじゃん。









北山さん、


先週私にいきなりキスしたくせに会社では普通にしてるし。





それでいて、誰よりも優しく接してきて

私の調子狂わせるし。







それに＿＿＿






『…お前のこと、別にからかったとかじゃねーから。』





……嘘ついたもん。









でもそれは



北山さんを責める理由にはならなくて。








初めから私のこと眼中にあるワケ無かったのに


こんな当たり前のことに気付けなかった自分が嫌。








彼女でも無いのに


ましてや私…北山さんに何も伝えてないのに




それなのに立花さんに嫉妬した自分が嫌。









「今のはいきなり立花に…されたから、それで……」



「べ、別に……っ、そんなの聞きたく無いです……っ、」







北山さんの言葉を遮るようにして


下を向いた私。







＿＿＿歩道の点字ブロックが、歪んで見えた。









そう、だから私は…







「私……っ、自分に怒ってるだけなので……」






ホントは、北山さんには怒ってないと思います。









そう言ってもう一度顔を上げたら






「…じゃあなんで泣くんだよ、」






勝手に涙が目から溢れ出てきたみたい。








「１回話そう。な？」







不器用に涙を拭おうとする北山さんの手の温もりに


先週もドキドキしてたはずなのに









「もう…何も話すこと無いので帰って下さい……っ！」




「…本気で言ってんの？」






「…ほんき、です……っ、」







…今日は、なんでこんな突き放すような言葉しか出てこないんだろう。









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