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或る隊士 /神崎アオイ ページ5

白む空を感じる。
先程まで痺れていた手足の先は、もうほとんど感覚はなくなっていた。飛んでいった左足はおそらくその辺に転がっているのだろうが、目線をやるのも億劫だった。腹に穴が空いているから、呼吸しようとする度に血の塊がせりあがってきて喉がごろごろと鳴っている。気を失うほどの痛みも今はあまり感じない。

自分はもうすぐ死ぬのだとわかった。

竈門少年たちや柱の皆様のように特別なものは持たない、ありふれた隊士のひとりだ。私が死んだところで鬼殺隊に大きな影響はないだろう。悔いのない死に方なんて出来ないと、分かっていた。相打ちという形でも鬼は討った。後悔はあまりない。

ただ、アオイにもう会えないということだけが唯一悲しく感じられる。

隣で鴉がおろおろとした様子で私を覗き込んでいる。力を振り絞って撫でてやると、涙を流し擦り寄ってきた。かわいい子。


負傷する度に、アオイはぷりぷり怒りながら治療してくれた。お土産を渡すと喜んで直ぐにみんなに分けると言ったが、あれはアオイに食べて欲しかった。自分が戦いにいけないことを申し訳ないと、泣きながら謝ってきた夜、私たちは一緒に眠った。アオイが治してくれるから、私は戦いに行けると話した時、アオイはまた少し泣いていた。同期が同じ任務で死んだとき、黙って手を握ってくれるから今度は私が泣いた。秘密よ、とはにかみながらくれたお揃いの鈴は剣につけてある。今度、一緒にぜんざいを食べに行く約束をしたのに、守れなかったな。

「アオイ、」

口にした瞬間、嘘みたいに涙が零れた。悔いのない死なんて諦めていたのに、後悔なんてないはずだったのに。

口から溢れた血が地面に伝って涙と混ざる。
まだ話したいことが沢山ある。
もう一度、手を握りたい。
ただ、もう一度会いたい。


「アオイ、アオイ、、」
しゃくり上げる度に肺から血が上って苦しい。なのに抑えられない。激しく咳き込むと、鴉が胸元にまとわりついて血と涙を拭おうとしてくれた。もう撫でてやる体力は残っていないけれど。

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あおりんご(プロフ) - 吹雪さん» ありがとうございます!挑戦してみます。とてもゆっくりの更新ですが、読んで頂けて嬉しいです。 (2020年11月6日 22時) (レス) id: 8502751b8c (このIDを非表示/違反報告)
吹雪 - あの、悲鳴嶼さんは書いてもらえませんか。 (2020年11月2日 21時) (レス) id: a5355ab53e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あおりんご | 作成日時:2019年8月15日 1時

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