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「… 、…あの 爆豪くん…?」




1度 いまの状況をぐるりと考えたように、すこしの間を置いてから 腕の中で声が籠った。

「…ええと、どうしたの…かしら」




もごもごと言葉を零すソイツの涙はピタリと止まっている。


それはただ驚いて
泣くのも忘れていると言ったような感じで。


それでも俺は抱きしめた腕を外すことはなかった。



「…お前が自分の個性を嫌ってんのに、ソレは関係あんのか」


どうしたものか、と考えているであろう奴の事なんて
軽く無視して 言葉を漏らした。



「…ええ、まあ」

口籠るソイツの背中をトン、トンと子供をあやすように叩いてやると
小さくため息をついて
根負けしたかのように渋々と話を始めた。




自分の個性が発現したのは 4歳の頃、家族旅行で海に行った時なのだ、と。







「…私の個性ね、両親どちらの個性でも無かったの」

腕の中に隠れる表情は見えない。



「親戚にも、誰にも。
人魚になるなんて気味の悪い個性を持つ者はいなかったの」

どこか 自分を嘲笑うような声だけれど。




「お前が浮気して作った子なのか、と父は母を怒鳴り付けたわ。私は本当に2人の子なのにね。」


「理不尽に責められた母は、当然のように私を責めたわ。
″出来損ない″ ″産まなければよかった″ なんて」


「妹が産まれてからは 地獄だったわ。
父の個性をしっかりと受け継いだ彼女は、私と違ってとても可愛がられていたから。」




どんどんと肩が震えて
その肌はどこか体温が下がっているような気がした。

それでも気丈に振る舞う声だけが、妙に痛々しい。






「…1人で生きるのは とても辛いんだ」






ぎゅう、と俺の服を掴んだ手が震えていて
襟口にぽたぽたと温かい何かがが落ちてくる。

ソレが何か分かっているから、何も言わないでいた。




「… ねえ、私 なにか、悪いことしたかなあ…?」





ソッと俺の体を後ろに押し、顔を上げた。

涙の線がいくつも頰に伝っている。
長い睫毛には雫がついている。


俺を見つめ へらりと表情筋を働かせたその姿に、心臓がドクンと音を立てた。
ああ、いたいな コレは。




「…これからは、1人でなんて生きなくていい」



不意に口をついた言葉。

ぎゅうっ、ともう一度抱きしめ 壊れそうに細い肩に
コイツは俺よりもか弱いのだと実感した。





「なあ、A」





はじめて、その名前を呼んだ。




《 そんな両親から送られた愛のある物 》

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キリ - 美潮ちゃんの見た目聞くとアリ○ル見たいですけど似せたんですか?とっても面白いです (2018年1月7日 5時) (レス) id: e989008aff (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - アカネ先輩さん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます!! ぜひ読みに行かせて頂きますね◎○続編になりますが、そちらで更新頑張りますのでお付き合いくだされば嬉しいです ありがとうございます! (2017年5月21日 21時) (レス) id: ca90c69f0b (このIDを非表示/違反報告)
アカネ先輩(プロフ) - めっちゃ面白い…タイトルに惹かれて一気に読みました!作者さんの書くかっちゃんがかっこいいです!私もかっちゃんと轟くんの短編書いているのでよかったらみにきてください!更新楽しみにしてます(´˘`*) (2017年5月21日 2時) (レス) id: ad572bf5b5 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - みいるさん» すごくすごく嬉しいです!!!もっと楽しんで頂けるように頑張ります、シリアス回続きますが根気強くお付き合いください…(泣)ありがとうございます!◎○ (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - るるるさん» ひえええ(泣)恐れ多い…ありがとうございます…頑張ります…(泣) (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:西垣 | 作成日時:2017年4月16日 22時

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