128pager “忘れ去られた思い出” ページ9
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『………ﾊｧ』
切国「疲れたか？」
『………！あ、いや……』
切国「すまないな。俺は主のように器用じゃない。
教え方が悪かったら言ってくれ」
午後。私は初期刀である切国さんから
刀装と鍛刀について教えてもらっていた最中、
どうやら無意識にため息が出ていたらしく、
切国さんが少し困ったような顔をしてそう言った。
不安にさせたようだ。
『その、違くて………
最近、やたら周りの刀剣達に
心配されていると言うか………』
切国「心配………？」
『昼なんかカクカクシカジカで』
切国「………成程な。あんたはどう思ったんだ」
『………分からない。心配される事なんて、
ここに来る前はされた事なかったから
どうしたらいいか分からない』
切国「そうか………」
切国さんは少し考える素振りをしながら
メモに何か書き留めている。
そして言葉を選ぶように答えた。
切国「それだけ、あんたに心を開いた刀剣が
多くなった、と言う事だと思う。
大切にされる事、大切にされた事は、
ここには“失った刀剣”が多く居るから、
過剰に心配してしまうんだろう」
『………』
切国「あんたがこれまでどう生きてきたか、
その経緯は分からない。
だがここに居る、あんたと繋がりを持った
付喪神は………あんたの見方に着く。
その為の力があんたにはある。
だから、その…………」
『？』
切国「………無理をせず、委ねるといい。
あんたはきっと知らないだけだ。
大切にされる事を」
翡翠の、真っ直ぐな瞳を見て、
私は胸の奥が心休まる感覚を覚えた。
………切国さんは、本丸の刀剣男士と比べると
どこか違って見える。
落ち着いた緩やかな空気を纏っていて、
言葉もまた………何処か安らぐような気がした。
切国「な、なんだ。そんなに見つめて……」
『………いえ。切国さんは私が知ってる付喪神よりも、
付喪神らしくて、人らしいなって』
切国「？どう言う意味だ？」
『そう言われると困るけど、
貴方はよく、知っているんですね。
人も、付喪神も』
切国「………俺が主である赤神に拾われる前。
どこかの本丸で初期刀をやっていたらしい。
今の俺はこんな記憶喪失のバグがある故に
以前の俺がどんな奴だったか分からない。
だが、僅かに感じる時があるんだ。
前の審神者に………確かに、
大切にされていたような気がするんだ」
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2021年2月27日 11時
