†佰参拾捌† ページ19
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瀬《…………ほう、兄弟と言うのは誠のようだな。
記憶は朧気ではあるが、確かに良く似ている。
しかしあの“髭切”と言う太刀が“獅子”と言うならば、
お前はまるで“蛇”のようだ》
それは全てを見透かすような目。
そして、先程と表情が打って変わって、
どこか楽しむような不適な笑みへと代わる。
何か思い付いたような、嫌な予感しかしない。
瀬《ふむ、ではこうしよう。
獅子の弟よ、私に付き合え。
現世に残るお前の兄の本体を見せてもらおう》
膝丸「！」
『！！橋姫様、いくら貴方であろうと、
そんな勝手な真似、私は許す訳にはいかない！』
前田「しゅ、主君…………」
橋姫様の言葉に対して、私は即答で断った。
いくらなんでもそれだけは許さない。
現世の本体と言う事は、本霊に会うと言う事だ。
御用人の勤めは忘れてはいないが、
彼は心に深い傷を受けた。
会いたい気持ち…………そして痛いほどの悲しみ。
そんな彼まで巻き込む訳にはいかない。
彼らは私達人とは違う。
人は短命が故に、心境が移ろいやすい。
“忘れる”事で心の傷を癒す。
でも神である彼らは、永遠に近い長命なもの。
彼らは決して忘れない。
前任が彼らに行った“忘却の術”で無いかぎり、
彼らは傷の癒し方を知らないのだ。
それを、抉るような事…………私には出来ない。
瀬《御用人、それは貴様が言える事ではあるまい》
『！』
瀬《“会わせてやりたい”…………
それはお前も願っていた事であろう？
何を躊躇う事がある》
『(心を、読まれた…………！)』
瀬《人と神は違う、それはうぬが一番知っていよう。
その黄昏の瞳は、我らを映すのだから》
『ｯ…………』
膝丸「…………いいだろう」
『！良いんですか、膝丸様…………』
膝丸「嗚呼」
淡々とした答えに、私は不安でしかなかった。
私は彼の痛みを知っている。
記憶の中で、彼の叫びを知った。
あんなに辛い記憶を抱えたまま、
本霊に会ったらより辛いだけではないのか。
虚しいままではないのか。
そればかりが頭を過っていた。
でも、彼の意思のあるその目を見たら、
止める事何て、出来なかった。
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冷泉 雪桜(プロフ) - tomo10260403さん» コメントどうもありがとうございます！薄桜鬼も読んでくださって……感謝でしかないですね！これからもよろしくお願いいたします (2019年9月17日 12時) (
レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
tomo10260403(プロフ) - 冷泉 雪桜さまの作る作品の虜になりました！薄桜鬼も刀剣乱舞も一気に読んでしまって、小説を読むのが苦手なほうなのですが、のめり込むようにするすると入ってくる文章に、夢中です！ (2019年9月16日 17時) (レス) id: f4aa91fff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2019年9月6日 1時
