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†肆拾伍† ページ6







『し、燭台切、様…………』

燭台「ッ………………」







彼は私を前にでないよう、手でそう促していた。
どうして…………彼は私を避けていたのに。

何故庇ってくれたのかは分からない。
ただ、緊張した空気が、この場を支配する。
彼はこんなこと、望んでないのに。








歌仙「驚いたね………君は審神者を
誰よりも憎んでいたと思っていたが…………
庇うのかい?その人の子を」


燭台「歌仙君、僕は憎んでいる訳じゃない。
皆が傷ついている姿を、見てられないだけだよ」


歌仙「その皆を傷つけているのは人の子だ。
意外だったな、人を庇うなど…………」


燭台「この子は違う。彼女は違うんだ。
これまで会った人よりも、
誰よりも僕らを思ってくれている。

ただ、僕が…………」


『………………』

燭台「…………僕が臆病な、だけなんだ」









“格好悪いことにね”と、彼は俯く。
横顔は眼帯と髪で表情は見えなかった。
ただ、悔しげに唇を噛んで、
ギリギリと自分の拳を握り締め、
ポタッと血が流れていた。

そこから、言い表せない程の後悔が、
彼を苦しめているように感じた。









『………………刀を納めてください、歌仙様』

燭台「!君…………」


『互いに傷つけ合う必要はない。
私を庇う必要もない。

心配なら、私を見張ってくれて結構。
斬り捨てるのもいい。
ただ私が死なないように自分の足で
貴方達に歩むだけだ。
私は私がやりたいようにするだけの事』


歌仙「…………」


『でも死ぬつもりも毛頭ない。
今はその刀を納めてください。

貴方の振るうその刃は、
こんな所で振るうものではないでしょう』









そう言って私は自ら前に出た。
刀としての誇りがある彼らは、
こんな所で振るわれるべきではない。

これ以上、燭台切様のあんな姿を見ないためにも。
歌仙様の青い瞳が私を見据える。
ふぅ、と一息入れた時、彼はその刃を納めてくれた。

†肆拾陸†→←†肆拾肆†



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冷泉 雪桜(プロフ) - ブドウ農家の一人っ子さん» 薄桜鬼からすっとんで来てくれてありがとうございます!薄桜鬼の方がネタ切れになって中々進めれる事が出来ませんが、これからもよろしくお願いします! (2019年8月28日 12時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
ブドウ農家の一人っ子 - 薄桜鬼のほうからとんできて一気読みしました・・・冷泉さんの作品は控えめに言ってどれも神ですね(語彙力の喪失) これからも応援しています!! (2019年8月27日 20時) (レス) id: 70ec3f117a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2019年8月20日 1時

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