+参佰弐拾捌+ ページ8
阿部は言った。
“そんな顔をされたら思わず斬りたくなる”と。
そんな事をさらりと言う阿部が、
急に別の何かに感じたんだ。
本気で言ってるのか、嘘なのか。
そもそも屯所に残っていたのも何か企んでいたのではないか。
今まで身近に感じていた阿部が、あまりにも遠いように思えた。
阿部「今の、聞いてた？」
時宏「…………」
阿部「……………今逃げた隊士二人は兄弟でね、
“馬詰”って言うんだけど、
局中であまりいい扱いはされてなかったらしいよ」
時宏「なんで、逃がした？」
阿部「そりゃだって、私闘になるから。
局中法度は絶対でしょ？
私は自分で自分の腹を斬る勇気はないからね」
時宏「じゃあ、なんで…………無視すりゃいいだけだろ」
阿部「？なんか勘違いしてないかい？
二人とはばったり中庭で会っちゃって、
“見逃してくれ”って言い張るから
“じゃあどうぞ”って言っただけじゃないか。
ついでに言えば私は戦闘狂じゃないよ」
そう言って阿部はケラケラ笑う。
…………じゃあ、あの寒気はなんだ？
いつもだったら冗談かって済ませるが、
あんなの初めて感じた感覚だったぞ。
声を聞いただけなのに、ぞわりとした感触。
あれは一体どう説明するんだ。
そう思って、口に出そうとするけど、
情けねぇ話、何だか…………怖くなっちまった。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
今まで過ごしていた仲間が、
まるで違う何かに感じる………
山野も、同じ気持ちだったのか？
楠が間者であると疑わなきゃいけなかったとき、
あいつも同じ事を思ったんだろうか。
相手を疑う自分が嫌で、
でも…………気づいてしまったら、気になってしまう。
平然としている阿部を見ながら、俺は自分と奮闘した。
山野は言った。選択の時は必ず来てしまうと。
もしも、俺が考える最悪な結果だったら、
俺は山野みたいに、何かを捨てるのだろうか。
何を、選ぶんだろうか。
まだ、分からない………
まだ──知りたくない。
広瀬side〜end〜
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 321人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冷泉 雪桜(プロフ) - ひゃくまるさん» コメントありがとうございす！そうですね。いつか書けたらいいなと思います。これからもよろしくお願いしますね！ (2018年12月26日 15時) (
レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
ひゃくまる(プロフ) - これから山野さんがどんな風に成長していくか楽しみです！作品を読んでて思ったことが山野さんは辛いこととか抱え込んでしまうキャラなのでいつか誰かを頼れるようになるといいですね(*´-`) (2018年12月26日 1時) (レス) id: 057beedb8c (このIDを非表示/違反報告)
なや(プロフ) - 返信ありがとうございます！これからも楽しみにしております(´∀｀*) (2018年12月2日 21時) (レス) id: 47f47e69bf (このIDを非表示/違反報告)
冷泉 雪桜(プロフ) - なやさん» なやさんとこの小説を結びつけてくれたのも新選組が紡いでくれた縁だと思います。更新が遅い日々が続いてしまいますがこれからもよろしくお願いします(*´-`) (2018年12月1日 23時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
冷泉 雪桜(プロフ) - なやさん» なやさんコメントありがとうございます！私はただ誰かと共感したくて自己満で書いただけですが、なやさんのような人に読んでもらえるなんて私としても嬉しく思います。 (2018年12月1日 23時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2018年7月10日 16時
