【刀剣乱舞】その縁、巡りゆく定め (ページ39)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:63,762 hit

†漆佰漆拾捌† ページ39

･

……………時の政府からの依頼で、
現世で御用人を務めていた俺が
各本丸の御用も聞いてやってほしいと言われ、

あちこち本丸を見回る事に
なっていたのだが……彼を見るのは初めてだな。

鶴丸「……………悪いが、御用は無いぜ。
巻き込まれたくなきゃ、帰った方が吉だ。
本丸の見習いは死に、主は狂った。

この本丸は、間もなく政府に消されるだろう」

ﾂﾑｸﾞ「！そんな！」

鶴丸「……………それに、俺の願いは
人間のお前さんじゃあ
叶えることは出来ないだろうさ。

さあ、とっとと帰って………

───いや、一つあったな」

ﾂﾑｸﾞ「？」

そう言って鶴丸は俺の下までやってくると、
とあるものを俺に差し出してきた。

真っ白なふかふかの布で、
彼が大事そうに抱えていたもの。
真っ白な布は彼についていた血で染まってはいたが、
くるまれていたものは無事のようだ。

鶴丸「………“これ”を、預かってくれ」

ﾂﾑｸﾞ「？………ｯ！？これ、は…………
な、何故これを、貴方が！？」

･

??『ぁ、う………えぅ……あー、あう………』

それは確かに動いていた。
布越しに伝わる温かい体温。

小さな命。

確かに生きていた、小さな小さな産声。
寝づらそうに、少し悲しげな産声を上げていた
その命は………とても、とても。

“それは俺が抱えるには、あまりにも重いんでな”

彼はそう言って、悲しそうに笑った。

間違いない。朱鷺と、夜蝶の子供。
夜蝶は彼女の初期刀に殺された筈だった。
妊娠していたのは知っていたが、
当然、刺されて死んでいたと思ってもいた。

嗚呼………生きている。
俺の、俺の腕の中で………確かに生きていた。

幾度も家族を失って来た。
両親に見捨てられ、愛してくれた姉が殺され、
愛した朱鷺を失った。

それでも………彼らは繋いでいた。
命を繋いでいた。

繋いで、必死に生きていた。
この赤子もそうだろう。

嬉しさが増して、俺はまた泣いた。
ここにいる。繋いだ命が。
俺が残されたのは、そうか…………
この子を守るためなのだと知った。

名一杯、愛そう。
愛して、名を呼んで………

俺が今度こそ、守らなければ。

愛する人達の為に。
必死に繋いでいた亡き命の為に。