拝啓、傷だらけの君へ【鬼滅の刃】

･ ページ34

不死川さんははっと息を飲むと、ぎゅうと抱きしめてくださった。



苦しいですよ、と言えば、今だけだ、今だけは…と嬉しそうに、苦しそうに言うものだから笑って許してしまう。



少したってから、ゆるゆると不死川さんが腕を弛めた。



ふう、と息をつくと、不死川さんが何だか恐る恐るというように声をかける。




「なァ、さっきの言いぶりだと…アンタ俺の顔見た事あるってことか」



「ええ、一目惚れなのです」



「…俺の顔は怖えだろ。」




「いいえ」



「嘘つかなくていい」



案外臆病というか、疑り深いお人なんですね。



これからこうして不死川さんのことを知っていく、それがとても嬉しい。




でも今はとにかく、この強くて少し臆病な人の誤解を解かないと。



不死川さんの顔を探して手を動かすと、不死川さんが察して私の手を不死川さんの顔に近づけてくれた。




そのままペタペタと不死川さんの顔を触ると、ちょうど額の当たりを触っていた時、困惑したように眉をひそめる。





「お、おい」




「こうするとあなたの顔が分かりますね」




「……想像よりもずっと醜い顔だろ、悪かったなぁ夢を壊して」




そう、自嘲気味に言うものだから。




私のことバカだって仰ったけど、貴方だって随分お馬鹿さんですよ。


だって、




「いいえ。想像よりもずっとずっと優しいお顔の方でした。もちろん心根も」





するりと頬を撫でて、心から貴方に告げる。




「愛しております、不死川さん」





手を当てている頬がどんどん熱くなってくる。




「照れてらっしゃるのですか？」




「おまえ、なァ！
…俺もお前に1個言いてえことがある」

拝啓、傷だらけの君へ→←･

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す