検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:11,749 hit

2お帰りの勇気 ページ3

シルクside

「かーちゃん!兄貴来たからAの荷物運びたいんだけどー??」

母「あー!!ありがとう。」

と言ってトイレ掃除から帰ってくる母親。

朝からずっと家中の掃除をしている。

母「荷物階段の下にまとめてあるから。よろしくね。…あとは玄関のお掃除しなきゃね!」

兄「いや、そわそわしすぎだろw」

「そーそー。座っとけって。なに親が娘に会うのに緊張してんだよ。」

母親の気持ちが分からんでもない。

きっとここにいる全員、今までにない緊張感を持っている。

俺だって例外じゃない。


母「…分かってるよ、そんな事。でももう11年も経つのよ?あの子は私達を恨んでるかもしれない…。でなくても、今更私どんな顔してあの子に会えば良いのか分からないの。」

「…。」

何も言えなかった。

親の立場だときっと、俺が想像している以上の責任を感じているのだろう。

母親を励ますいい言葉も、

この空気を和ませる決まり文句も、

何も出てこない自分にイラッとくる。

兄「荷物こんだけか!?これなら1人で大丈夫だわ。りょう、鍵だけ貸して。」

「お、おう…。」

投げた部屋の鍵をキャッチし、荷物を背負う。

そして呟くように、

「…離れてた年数とか、恨まれてるとか、よく分かんねーし、それが無かったことになる訳でもねーけどさ。」

兄貴は俺らの方を振り向き、困ったように笑った。

「いつも通りに笑って、お帰りって言ってやればいいんじゃねーの?」

そう言うと兄貴は出てっていった。

…そっか。

空白の11年は埋めることは出来ないし、

俺らはあいつに恨まれてるかもしれない。

それでもAは大学生活ここで過ごすことを決めたんだ。

ゆっくりでいい。

空白を埋めないくていい。

これからを新しく書き加えていけば。

「お帰り」

そう言ってやれば。

母親と目が合った。

同じことでも考えていたのだろう。

母「お茶でも入れて一休みするか。」

「おう。」

もうすぐ、

もうすぐ、Aが

帰ってくる。

3ただいまの勇気→←1出会いの季節



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.2/10 (25 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
53人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

かたつむりん(プロフ) - オリジナルフラグ外しましょうね (2017年8月10日 15時) (レス) id: c75313775c (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり - オリフラ外して下さいね。違反報告されますよ。 (2017年8月10日 8時) (レス) id: e276766e82 (このIDを非表示/違反報告)
アリスドール(プロフ) - オリジナルフラグを外してください (2017年8月10日 6時) (レス) id: 6d9b15ae1b (このIDを非表示/違反報告)
七夕ですね桐生さん(24)(プロフ) - オリフラ外さないと違反報告されますよ〜。 (2017年8月10日 2時) (レス) id: c05527f524 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:香月華月 | 作成日時:2017年8月7日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。