【ハイキュー！！】君との恋は、たくさん甘い。【孤爪研磨】

歪んだ愛に幸せを。 ページ15

「…A。何してるの」

目の前の恋人、Aに聞く。
何せ、俺に馬乗りになって、手にはナイフを持ってるから。

『見ての通りだよ？』

ニッコリと笑うA。
いつも通りの笑顔の裏に、狂気を感じた。

『私ね、研磨のこと大好きなの。全部が好き。綺麗な髪も、大きい目も、暖かい手も、歪みの無い性格も。頭の上から足先まで、中身まで全部。』

Aはうっとりとした表情で言葉を並べた。
本当に幸せそうな表情でもあった。

でも次の瞬間、首筋に鋭い痛みが走る。
Aが、俺の首筋に噛みついた。
急だったから、思わず顔を歪める。

首筋から流れる血を、Aが吸う。

『あ〜っ、美味しい…！研磨の血…最高！』

妖艶な顔で俺の血を味わうA。
口の端に血がついていて、吸血鬼みたいだ。

『私、こんなに研磨のこと好きなんだよ。好きなのに、なんでこんなに辛いの？』

悲しそうに俺を見つめる彼女の瞳。
その目は、光をうつしていなかった。

『辛いの。研磨が他の人と話すだけで、心臓が壊れそうになる。もう、限界なの。だからね、今みたいにすればっ、苦しまずに研磨と一緒にいられるの！！分かってくれるよね！？』

狂気的な笑みで言葉を喘ぐ、大好きな彼女。
前の彼女とは全く違う。同じなのに、違う。


『研磨と離れたくないの。だから、研磨。許して＿＿』






「…本当にいいの？」



ピタッ。


俺の呼び掛けに、ナイフが首に当たる寸前で止まる。

「Aは、俺を“殺して”幸せなの？」
『…へ、』

殺して、という単語に強く反応するA。
…今なら、引き戻せる。

「俺を殺すまではいいかもしれない。でも、その後は？俺と会えなくなってもいいの？」

直後、Aがナイフを取り落とす。
同時にAの瞳から溢れる、大粒の涙。

『……研磨、をッ、ころッ…！』

我に返ったように震え始めたA。
顔は真っ青だ。

『わ、私…！ひ、酷い事してッ…！！』

Aの涙を拭って、優しく抱き締める。
それだけで、何時ものAだ、と感じた。

『ごめんっ…ごめんねッ…！！』

腕の中で謝り続けるA。
怒ってないのに。

「怒ってないし、いいよ。お互い様だしね。もう一回、やり直そう」

俺の言葉にAは、泣きながらも力強く頷いた。



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