【QK】一番近くて、遠い場所。〔Fkr〕 (ページ2)

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Side You

「はぁ。」

画面と睨めっこしているうちにため息が出る。
決して、仕事が嫌な訳ではない。
ただ…心が寂れている感じがするのだ。

「どうしたの？ため息すると幸せ逃げるよ。」

声の主に顔を向けず、仕事を続けながら質問に答える。

「なんでもない。お気遣い感謝するよ、福良。」

「あんなに大きなため息しといて何を言ってんの。」

私が話す気がないのを察してか、それ以上言及してくることはなかった。
誰かに相談するんだよ、とだけ残してどこかに立ち去っていった。

なんでこんなに優しくしてくれるんだよ。
このどうしようもない私を。

やがて定時になって、仕事に余裕がある私はそうそうに退社する。

「お疲れ様です。お先に失礼します。」

別に早く帰ったって、これからの予定は何一つなかった。
ただ、定時に帰れるのはこの会社だからこそだよなぁなんてことを考えるうちに最寄り駅に着いてしまった。

今は5月。
駅前は若者たちで溢れかえってキラキラ輝いている。

「眩しすぎるな。」

流行りのスイーツ、新しいファッション。

廃れた私にはもうそんなものは似合わない気がして。
いつだろう、自分の気持ちに嘘をついて、目を背け始めたのは。

答えは案外簡単に出た。

あぁ、“あいつ”が私の人生を狂わせてからだ。

ホームに滑り込んできた電車に乗り込み、仕事帰りの人に揉まれながら帰宅する。
駅から数十分歩けば、私たちのマンションが見えてくる。

今日も、帰ってきてしまった。

「ただいま。」

薄暗い部屋に向かってそんな言葉を発しても、返事が返ってくるはずはなかった。
散らばった洗濯物、溜まった食器、半分だけ空いたカーテン。

だらしないの結集のような家に雑に靴を脱いで上がる。
バックを放り投げ、ソファに沈み込めばもう立ち上がることはできない。

スマホを取り出してみれば、福良からLINEが入っていた。

福良今度飲み行こうよ

もうほっといていいんだよ、福良。
A予定が合えばね。

形式だけの返事をして、スマホの電源を落とす。
夜ご飯、どうするかな。

冷蔵庫を開ければコンビニで買ってきておいたサラダとおかず数品が目に入る。
適当に手に取って、机上に並べる。

お箸が二膳、人間が一人。

「いただきます。」

黙々と箸をすすめる。
1人で食べるコンビニのおかずは、全く味がしない。