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｢身長伸びましたね｣
｢君まで言うの｣
うんざりだ、と声音でわかる。大方私の部屋に来るまでに知り合いにそんな声ばかりかけられたのだろう。他人の家の子供の成長とは早いものである。
膝立ちしてもギリギリという高さに体格差を感じる。もうすっかり幼少期の私の方が高かった面影なんて一欠片も残っていない。
水分を含んだ髪に指を通してドライヤーのスイッチを入れる。熱かったら言ってください、と言う私の声は聞こえているのかいないのかよくわからないが、この人なら遠慮なく言ってくるだろうと続ける。
昔から、この人は冷めていたとは思う。周りの子よりもなんとなく大人びていて、凛とした佇まいに美しい所作は育ちの良さが滲み出ていた。それでも今なんかよりはずっと他人と関わっていたのだ。
いつから人嫌いになったのか。私には判別がつかない。もう長く地続きに付き合って来た仲だ。どこがターニングポイントだったのかなんて想像すら沸かない。
一つ確実に言えることは、私に頭を預けて目を瞑っているこの人の考えていることは今も昔も全く一ミリだって理解できない。親が公務員で名家の生まれ、その影響とは言えここまで妄信的に町へ好感を抱くんだろうか？疑念に応える人間は誰もおらず、いつも通り絹糸のような髪に戻った彼が静かに目を開いた。
カチリ、とドライヤーのスイッチとオフにしたが、その後の刺す様な沈黙が耐え切れず必死で話題を探す。
｢いいんですか｣
私の主語の不明瞭な問いに一瞬何のことか思案した後、理解したのか私に向き直る。
｢僕より君のが納得してなかったと思うけど｣
御尤もな返答に言葉が詰まる。手探りで一番近くにあった話題を掴み取ったものがこれだったのだ。
婚姻。それを一大行事という言葉で済ますのはなんとも言い難い軽さを感じてしまうが、現状私の中ではそのワードチョイスがしっくり来る。ここまで事を大きくする理由はないだろうに。
｢それとも僕が君を愛してるとでも言えば満足なの｣
｢え｣
どっと変な汗が背中を伝う。私が生涯彼から聞かないであろうと思っていた言葉をいともあっさりと口に出した当の本人は冗談だよ、と笑う。
冗談なんて、言えたんですね。
ハハ、乾いた笑いを出した私の後ろの襖が突如勢い良く開かれた。
｢お嬢！｣
スーツに派手な柄シャツを着た彼はどう見てもカタギではない雰囲気を纏っている。
彼の鋭い眼光が恭弥さんを捉えると、バッと頭を下げた。
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銀竹 - さとうさん» お褒めの言葉ありがとうございます。稚拙な文で書いていると猛省しながら書いておりますが、そう言っていただけると幾分心が軽くなります。ゆっくりの更新ですが、どうぞよければお付き合いください (2019年6月19日 15時) (
レス) id: c46cf0d30b (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - コメント失礼します。とっても面白くて何回も読み返してしまいます！夢主ちゃんと雲雀さんの歪な関係がとてもグッときます。影ながらいつも応援しております。更新無理せず頑張ってください！ (2019年6月18日 23時) (レス) id: 501cc7c254 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：銀竹 | 作成日時：2019年5月28日 20時
