3.嫁入り ページ8
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雨が降っている。ザアザアなんて大仰な音はしないが、しっかりと人間が濡れるには充分な雨足が彼を追いかけたようだ。証拠に、全身びっしょりと濡れ鼠となった彼の細身な体のラインが見える。
｢随分と派手に降られましたね｣
苦笑いでバスタオルを差し出す。無言で受け取り縁側へと座り込んだ恭弥さんの表情は窺えない。
元来人を毛嫌いする彼は人の出入りが多い本家へ訪れたがらない。何か用がある時には裏側の私の部屋へと回ってきて上がりこむのがいつの間にか定石となってしまった。私の部屋は玄関じゃないんですけど、とも言う気にはなれずいつも受け入れては外廊下から客間まで通す。
五月六日。彼の誕生日が過ぎ、晴れて法の下に婚姻を結べる歳になった。麗らかとは言い難い空模様になんとも言えぬ妙を抱く。パラパラと降る雨で上から下まで濡れて冷え切った彼に視線をやった。
最早慣れたもので、自室の桐箪笥の持ち手を引けば男性物の着流し。私が着ないであろうそれは常備してあるものだ。
｢着替えてください。体、強くはないでしょう｣
｢一言多い｣
不機嫌そうに服を脱ぎ始めた彼から顔を逸らす。いい加減にこの人は羞恥心が湧かないのだろうか。それとも世の男性は皆こうであるんだろうか。そろそろ私も年頃なので大変気まずい。
白い肌が瞼の裏に焼き付いている。色々な意味で心臓によろしくない人間だな、と重いながらため息を吐いていると、数人分の足音が聞こえてくる。
大方玄関からきちんと訪問の手順を踏んだ沢田さん一行だろう。私としては恭弥さんの機嫌が気になったので、未来のボスが一端の人間の些細なイザコザに来なくて良い、などと最もらしい理由付けで断った。だが勉強してこい、などと言う鶴の一声か悪魔の囁きかリボーンさんの言葉で結局来ることになった。真に解せない。
悶々とこの後の展開を思い浮かべていれば、着替え終わったであろう恭弥さんの近付いてきた影で視界が暗くなる。
振り向くと相変わらず和服が様になっている。濡れた髪の毛を鬱陶しそうにタオルでガシガシと拭いて水滴を飛ばしている。そのやり方は髪によろしくない。
｢痛みますよ｣
｢別にいい｣
｢折角綺麗なんですから大切にしてください｣
部屋に置いてある籠の一つを引き寄せ中からドライヤーを取り出す。それに露骨に拒否反応を示す彼は猫のようだ。コードを刺してほら、と座るように床を叩けば嫌々ながら私の前に正座で座った。
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さとう(プロフ) - コメント失礼します。とっても面白くて何回も読み返してしまいます！夢主ちゃんと雲雀さんの歪な関係がとてもグッときます。影ながらいつも応援しております。更新無理せず頑張ってください！ (2019年6月18日 23時) (
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作者名：銀竹 | 作成日時：2019年5月28日 20時
