11.ビンゴ ページ27
Aさんが続けようと口を開いたところで頭を抑えてぐらつく。そのまま倒れ込んだAさんを受け止めるように雲雀さんが腕を伸ばして体勢を整えさせるが、依然とAさんの首は脱力で揺れている。
｢A？ああダメだ、こりゃまた寝ちゃったね｣
彼女を少し揺すった巳緑さんが肩を竦める。どういうことが状況が飲み込めないでいるとAさんの頭を床に静かに倒しながら雲雀さんが語り始めた。
｢Aがあの日から、累計で一日に三時間程度しか目を覚ましていられなくなった｣
話をする雲雀さんの声や顔からは上手く感情が伝わってこない。普通は悲しんでいたりするのだろうが、この人が他人にそんな風な気持ちを持っているかも怪しい。
俺には雲雀さんが未だによくわからないのだ。
｢気を失うように目を覚ましては寝てる。ねえ、あの十字路の話は本当にあれで終わりなの｣
何となく、少しだけ言葉の端に焦りが見えた気がした。
Aさんの手を取り起こそうとする雲雀さんは、俺が前々から知る人間とはまるで別人に見える。
｢……おい雲雀、前から思ってたが、テメーAに惚れてんのか？｣
｢ちょ、獄寺君、ほ、ほら関係ないし……！｣
ズケズケと突っ込んだ獄寺君に雲雀さんは顔を向ける。絶対怒るぞ、と構えた俺に反して雲雀さんからは怒りのリアクションはない。
ただじっと獄寺君の目を見ている。
｢さあね、僕は独りでいて初めて強さを保持できるんだ。本当は切り捨てるべきだよ、こんなの｣
こんなの、扱いされたAさんは死んだように眠っている。
｢ただ、淘汰されるべきだった弱者を僕が拾い上げた責任を取らなくてはいけない。捨て犬の面倒は最期まで、それだけだよ｣
つまり、えっと、どういうことなんだろうか。
わかったようなわからないような。巳緑さんが相変わらず空気を食って笑う。
｢Aは首輪つけてないと死んじゃうって話。捨て犬、言い得て妙だねえ｣
クスクスと口元を手で隠した巳緑さんがおもむろに上品な仕草で立ち上がる。
｢僕は御手洗に行ってくるから、もしみんなでどこかに行くなら声をかけておくれよ｣
じゃ、と襖を開けて行ってしまった彼がいなくなったことでこの場の空気が幾らか重みを増す。
ゔ、気まずい。
どうするのかと相談のために獄寺君の方を見ようとしたが、その途中、俺には到底信じられない光景が目に入ってきた。
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さとう(プロフ) - コメント失礼します。とっても面白くて何回も読み返してしまいます！夢主ちゃんと雲雀さんの歪な関係がとてもグッときます。影ながらいつも応援しております。更新無理せず頑張ってください！ (2019年6月18日 23時) (
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作者名：銀竹 | 作成日時：2019年5月28日 20時
