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通された部屋は当たり前に和室だ。床の間に飾られた花や掛け軸は俺には到底名前も価値もわからない。が、ドラマや映画に出てきたそれっぽい和室というものがこんな感じだったのをぼんやりと覚えている。
本当の和の空間というのは違和感なく存在するものなのだな、なんて呑気に考えて入室すると床に伸びたAさんの姿。
｢うわ｣
｢あれ、Aは寝ちゃったのかい｣
襖をゆっくりと閉めた巳緑さんがニコニコと話しかけたのは、寝ているAさん。ではなくその隣で面倒臭そうに彼女の頭を膝枕の形で足に乗せた雲雀さんだ。
｢起きて、A｣
｢おーらい……｣
｢あはははオーライってなんだいA！ハハ！｣
寝ているAさんへの配慮を全くせずに大声を出した巳緑さんに扇子が飛ぶ。相当な音が鳴ったそれは痛そうで、当たった巳緑さんの額は赤くなっている。
｢アイタタ、なんで君は僕にそんなに冷たいのかなあ｣
｢日頃の行い｣
｢うわ、かった……骨……｣
そんな中ムクリと頭を起こしたAさんがボソリと呟く。そりゃあ雲雀さんの足じゃ枕としては大変硬いだろう。
｢なに。勝手に寝といて文句付ける気｣
｢事実じゃないですか｣
｢僕も恭弥くんの膝枕に憧れあるけどしてくれないの？｣
｢しない。気持ち悪い｣
これはこれで噛み合っているような気もする会話をしていると襖が開いて草壁さんがお茶を運んで来た。
それぞれの前にお茶と真ん中にお茶菓子を置いた草壁さんは、では、と言い残し部屋を出ていってしまった。妙な沈黙の中でひとりずっと微笑んでいる巳緑さんは大分救いだ。
｢恭弥くん、なんだってオカルト話を聞きたがってるの？｣
直球ストレートに本題から切り込んだ巳緑さん。暑さにコップの中のお茶が溶けてカロン、という音が鳴る。
｢私がその、遭遇しまして｣
｢は？｣
素っ頓狂な声を上げた俺と獄寺君に顔面蒼白になっているAさんが続ける。
｢あの十字路と四方向に子供と鏡の光。役満じゃありませんか｣
ガラスのコップを覆う手は震えている。嘘ではなさそうだ。そもそも、こんなので嘘をついて何になるというのだ。
獄寺君が話に食いつく。
｢それがマジならどう逃れたんだ｣
チラ、と雲雀さんを一瞬見たAさんだったが語ることの無い雲雀さんに諦めをつけて口を開く。
｢よくわからないんですけど、恭弥さんが後ろから話しかけてきまして。前後と天地の感覚が消えていたのですが、そこで見えたものも感覚も全て戻りましたね｣
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さとう(プロフ) - コメント失礼します。とっても面白くて何回も読み返してしまいます！夢主ちゃんと雲雀さんの歪な関係がとてもグッときます。影ながらいつも応援しております。更新無理せず頑張ってください！ (2019年6月18日 23時) (
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作者名：銀竹 | 作成日時：2019年5月28日 20時
